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 3花散里(定家自筆本)3 
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 7渋谷栄一校訂(C)(ver.1-2-2)7 
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花散里

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 11光る源氏の二十五歳夏、近衛大将時代の物語
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 13 花散里の物語
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 15 [主要登場人物]
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 光る源氏<ひかるげんじ>
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呼称---大将殿、二十五歳 参議兼近衛右大将
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 花散里<はなちるさと>
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呼称---三の君、麗景殿女御の妹 源氏の恋人
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 麗景殿女御<れいけいでんのにょうご>
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呼称---麗景殿・女御、故桐壺院の女御
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 惟光<これみつ>
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呼称---惟光、源氏の乳母子
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  • 花散里訪問を決意---人知れぬ、御心づからのもの思はしさは
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  • 中川の女と和歌を贈答---何ばかりの御よそひなく、うちやつして
  • 29 
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  • 姉麗景殿女御と昔を語る---かの本意の所は、思しやりつるもしるく
  • 30 
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  • 花散里を訪問---西面には、わざとなく
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     34【出典】
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     35【校訂】
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    花散里の物語

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     38 [第一段 花散里訪問を決意]
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     39 人知れぬ、御心づからのもの思はしさは、いつとなきことなめれど、かくおほかたの世につけてさへ、わづらはしう思し乱るることのみまされば、もの心細く、世の中なべて厭はしう思しならるるに、さすがなること多かり。
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     40 麗景殿と聞こえしは、宮たちもおはせず、院隠れさせたまひて後、いよいよあはれなる御ありさまを、ただこの大将殿の御心にもて隠されて、過ぐしたまふなるべし。
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     41 御おとうとの三の君、内裏わたりにてはかなうほのめきたまひしなごりの、例の御心なれば、さすがに忘れも果てたまはず、わざとももてなしたまはぬに、人の御心をのみ尽くし果てたまふべかめるをも、このごろ残ることなく思し乱るる世のあはれのくさはひには、思ひ出でたまふには、忍びがたくて、五月雨の空めづらしく晴れたる雲間に渡りたまふ。
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     43 [第二段 中川の女と和歌を贈答]
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     44 何ばかりの御よそひなく、うちやつして、御前などもなく、忍びて、中川のほどおはし過ぐるに、ささやかなる家の、木立などよしばめるに、よく鳴る琴を、あづまに調べて、掻き合はせ、にぎははしく弾きなすなり。
    44 
     45 御耳とまりて、門近なる所なれば、すこしさし出でて見入れたまへば、大きなる桂の木の追ひ風に、祭のころ思し出でられて、そこはかとなくけはひをかしきを、「ただ一目見たまひし宿りなり」と見たまふ。ただならず、「ほど経にける、おぼめかしくや」と、つつましけれど、過ぎがてにやすらひたまふ、折しも、ほととぎす鳴きて渡る。もよほしきこえ顔なれば、御車おし返させて、例の、惟光入れたまふ。
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     46 「をちかへりえぞ忍ばれぬほととぎす
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     47  ほの語らひし宿の垣根に」
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     48 寝殿とおぼしき屋の西の妻に人びとゐたり。先々も聞きし声なれば、声づくりけしきとりて、御消息聞こゆ。若やかなるけしきどもして、おぼめくなるべし。
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     49 「ほととぎす言問ふ声はそれなれど
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     50  あなおぼつかな五月雨の空」
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     51 ことさらたどると見れば、
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     52 「よしよし、植ゑし垣根も」
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     53 とて出づるを、人知れぬ心には、ねたうもあはれにも思ひけり。
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     54 「さも、つつむべきことぞかし。ことわりにもあれば、さすがなり。かやうの際に、筑紫の五節が、らうたげなりしはや」
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     55 と、まづ思し出づ。
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     56 いかなるにつけても、御心の暇なく苦しげなり。年月を経ても、なほかやうに、見しあたり、情け過ぐしたまはぬにしも、なかなか、あまたの人のもの思ひぐさなり。
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     58 [第三段 姉麗景殿女御と昔を語る]
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     59 かの本意の所は、思しやりつるもしるく、人目なく、静かにておはするありさまを見たまふも、いとあはれなり。まづ、女御の御方にて、昔の御物語など聞こえたまふに、夜更けにけり。
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     60 二十日の月さし出づるほどに、いとど木高き蔭ども木暗く見えわたりて、近き橘の薫りなつかしく匂ひて、女御の御けはひ、ねびにたれど、あくまで用意あり、あてにらうたげなり。
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     61 「すぐれてはなやかなる御おぼえこそなかりしかど、むつましうなつかしき方には思したりしものを」
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     62 など、思ひ出できこえたまふにつけても、昔のことかきつらね思されて、うち泣きたまふ。
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     63 ほととぎす、ありつる垣根のにや、同じ声にうち鳴く。「慕ひ来にけるよ」と、思さるるほども、艶なりかし。「いかに知りてか」など、忍びやかにうち誦んじたまふ。
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     64 「橘の香をなつかしみほととぎす
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     65  花散る里をたづねてぞとふ
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     66 いにしへの忘れがたき慰めには、なほ参りはべりぬべかりけり。こよなうこそ、紛るることも、数添ふこともはべりけれ。おほかたの世に従ふものなれば、昔語もかきくづすべき人少なうなりゆくを、まして、つれづれも紛れなく思さるらむ」
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     67 と聞こえたまふに、いとさらなる世なれど、ものをいとあはれに思し続けたる御けしきの浅からぬも、人の御さまからにや、多くあはれぞ添ひにける。
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     68 「人目なく荒れたる宿は橘の
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     69  花こそ軒のつまとなりけれ」
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     70 とばかりのたまへる、「さはいへど、人にはいとことなりけり」と、思し比べらる。
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     72 [第四段 花散里を訪問]
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     73 西面には、わざとなく、忍びやかにうち振る舞ひたまひて、覗きたまへるも、めづらしきに添へて、世に目なれぬ御さまなれば、つらさも忘れぬべし。何やかやと、例の、なつかしく語らひたまふも、思さぬことにあらざるべし。
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     74 かりにも見たまふかぎりは、おしなべての際にはあらず、さまざまにつけて、いふかひなしと思さるるはなければにや、憎げなく、我も人も情けを交はしつつ、過ぐしたまふなりけり。それをあいなしと思ふ人は、とにかくに変はるも、「ことわりの、世のさが」と、思ひなしたまふ。ありつる垣根も、さやうにて、ありさま変はりにたるあたりなりけり。
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     76 【出典】
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     77出典1 夜や暗き道や惑へるほととぎす我が宿をしも過ぎがてに鳴く(古今集夏-一五四 紀友則)(戻)
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     78出典2 囲はねど蓬の籬夏来れば植ゑし垣根も茂りあひけり(出典未詳-源氏釈所引)(戻)
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     79出典3 いにしへのこと語らへばほととぎすいかに知りてか古声のする(古今六帖五-二八〇四)(戻)
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     80出典4 五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする(古今集夏-一三九 読人しらず)橘の花散る里のほととぎす片恋しつつ鳴く日しぞ多き(万葉集巻八-一四七七 大伴旅人)(戻)
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     82 【校訂】
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     83備考--(/) ミセケチ--$ 抹消--# 補入--+ 傍書--= ナゾリ重ね--& 独自異文等--* 朱筆--<朱> 不明--△
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     84校訂1 なめれど--な(な/+め)れと(戻)
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     86源氏物語の世界ヘ
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     87ローマ字版
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     88現代語訳
    88 
     89注釈
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     90定家自筆本
    90 
     91大島本
    91 
     92自筆本奥入
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