35 若菜下(明融臨模本)


WAKANA-NO-GE


光る源氏の准太上天皇時代
四十一歳三月から四十七歳十二月までの物語



Tale of Hikaru-Genji's Daijo Tenno era, from Mar. of 41 to Dec. the age of 47

4
第四章 光る源氏の物語 六条院の女楽


4  Tale of Genji  A concert by four ladies at Rokujo-in

4.1
第一段 六条院の女楽


4-1  A concert by four ladies at Rokujo-in

4.1.1   正月二十日ばかりになれば、空もをかしきほどに、風ぬるく吹きて、御前の梅も盛りになりゆく。おほかたの花の木どもも、皆けしきばみ、霞みわたりにけり。
 正月二十日ほどなので、空模様もうららかで、風がなま温かく吹いて、御前の梅の花も盛りになって行く。たいていの花の木も、みな蕾がふくらんで、一面に霞んでいた。
 一月の二十日過ぎにはもうよほど春めいてぬるい微風そよかぜが吹き、六条院の庭の梅も盛りになっていった。そのほかの花も木も明日の約されたような力が見えて、もりかすみ渡っていた。
  Syaugwati hatuka bakari ni nare ba, sora mo wokasiki hodo ni, kaze nuruku huki te, o-mahe no mume mo sakari ni nari-yuku. Ohokata no hana no ki-domo mo, mina kesikibami, kasumi watari ni keri.
4.1.2  「 月たたば、御いそぎ近く、もの騒がしからむに、掻き合はせたまはむ御琴の音も、試楽めきて人言ひなさむを、このころ静かなるほどに試みたまへ」
 「来月になったら、ご準備が近づいて、何かと騒がしかろうから、合奏なさる琴の音色も、試楽のように人が噂するだろうから、今の静かなころに合奏なさってごらんなさい」
 「二月になってからでは賀宴の仕度したくで混雑するであろうし、こちらだけですることもその時の下調べのように思われるのも不快だから、今のうちがよい、あちらで会をなさい」
  "Tuki tata ba, ohom-isogi tikaku, mono-sawagasikara m ni, kaki-ahase tamaha m ohom-koto no ne mo, sigaku meki te hito ihi-nasa m wo, kono-koro siduka naru hodo ni kokoromi tamahe."
4.1.3  とて、 寝殿に渡したてまつりたまふ
 とおっしゃって、寝殿にお迎え申し上げなさる。
 と院はお言いになって女王を寝殿のほうへお誘いになった。
  tote, sin-den ni watasi tatematuri tamahu.
4.1.4  御供に、我も我もと、ものゆかしがりて、参う上らまほしがれど、こなたに遠きをば、 選りとどめさせたまひて、すこしねびたれど、よしある限り選りてさぶらはせたまふ。
 お供に、わたしもわたしもと、合奏を聞きたく参上したがるが、音楽の方面に疎い者は、残させなさって、すこし年は取っていても、心得のある者だけを選んで伺候させなさる。
 供をしたいという希望者は多かったが、寝殿の人と知り合いになっている以外の人は残された。少し年はいっている人たちであるがりっぱな女房たちだけが夫人に添って行った。
  Ohom-tomo ni, ware mo ware mo to, mono yukasigari te, mau-nobora mahosi-gare do, konata ni tohoki wo ba, eri todome sase tamahi te, sukosi nebi tare do, yosi aru kagiri eri te saburaha se tamahu.
4.1.5  童女は、容貌すぐれたる四人、 赤色に桜の汗衫、薄色の織物の衵、浮紋の表の袴、紅の擣ちたる、さま、もてなしすぐれたる限りを召したり。 女御の御方にも、御しつらひなど、いとどあらたまれるころのくもりなきに、おのおの挑ましく、尽くしたるよそほひども、鮮やかに二なし。
 女童は、器量の良い四人、赤色の表着に桜襲の汗衫、薄紫色の織紋様の袙、浮紋の上の袴に、紅の打ってある衣装で、容姿、態度などのすぐれている者たちだけをお召しになっていた。女御の御方にも、お部屋の飾り付けなど、常より一層に改めたころの明るさなので、それぞれ競争し合って、華美を尽くしている衣装、鮮やかなこと、またとない。
 童女は顔のいい子が四人ついて行った。朱色の上に桜の色の汗袗かざみを着せ、下には薄色の厚織のあこめ、浮き模様のある表袴おもてばかまはだにはつちの打ち目のきれいなのをつけさせ、身の姿態とりなしも優美なのが選ばれたわけであった。女御の座敷のほうも春の新しい装飾がしわたされてあって、華奢かしゃを尽くした女房たちの姿はめざましいものであった。
  Warahabe ha, katati sugure taru yo-tari, akairo ni sakura no kazami, usuiro no orimono no akome, ukimon no uhe-no-hakama, kurenawi no uti taru, sama, motenasi sugure taru kagiri wo mesi tari. Nyougo-no-Ohomkata ni mo, ohom-siturahi nado, itodo aratamare ru koro no kumori naki ni, ono-ono idomasiku, tukusi taru yosohohi-domo, azayaka ni ni-nasi.
4.1.6   童は、青色に蘇芳の汗衫、唐綾の表の袴、衵は山吹なる唐の綺を、同じさまに調へたり。明石の御方のは、ことことしからで、紅梅二人、桜二人、青磁の限りにて、衵濃く薄く、擣目などえならで着せたまへり。
 童は、青色の表着に蘇芳の汗衫、唐綾の表袴、袙は山吹色の唐の綺を、お揃いで着ていた。明石の御方のは、仰々しくならず、紅梅襲が二人、桜襲が二人、いずれも青磁色ばかりで、袙は濃紫や薄紫、打目の模様が何とも言えず素晴らしいのを着せていらっしゃった。
 童女は臙脂えんじの色の汗袗かざみに、支那綾しなあやの表袴で、あこめ山吹やまぶき色の支那にしきのそろいの姿であった。明石夫人の童女は目だたせないような服装をさせて、紅梅色を着た者が二人、桜の色が二人で、下は皆青色を濃淡にした袙で、これも打ち目のでき上がりのよいものを下につけさせてあった。
  Waraha ha, awoiro ni suhau no kazami, karaaya no uhe-no-hakama, akome ha yamabuki naru kara no ki wo, onazi sama ni totonohe tari. Akasi-no-Ohomkata no ha, koto-kotosikara de, koubai hutari, sakura hutari, awodi no kagiri ni te, akome koku usuku, utime nado e nara de kise tamahe ri.
4.1.7  宮の御方にも、かく集ひたまふべく聞きたまひて、童女の姿ばかりは、ことにつくろはせたまへり。 青丹に柳の汗衫、葡萄染の衵など、ことに好ましくめづらしきさまにはあらねど、おほかたのけはひの、いかめしく気高きことさへ、いと並びなし。
 宮の御方でも、このようにお集まりになるとお聞きになって、女童の容姿だけは特別に整えさせていらっしゃった。青丹の表着に柳襲の汗衫、葡萄染の袙など、格別趣向を凝らして目新しい様子ではないが、全体の雰囲気が、立派で気品があることまでが、まことに並ぶものがない。
 姫宮のほうでも女御や夫人たちの集まる日であったから、童女の服装はことによくさせてお置きになった。青丹あおにの色の服に、柳の色の汗袗かざみで、赤紫のあこめなどは普通の好みであったが、なんとなく気高けだかく感ぜられることは疑いもなかった。
  Miya-no-Ohomkata ni mo, kaku tudohi tamahu beku kiki tamahi te, warahabe no sugata bakari ha, koto ni tukuroha se tamahe ri. Awoni ni yanagi no kazami, ebi-zome no akome nado, koto ni konomasiku medurasiki sama ni ha ara ne do, ohokata no kehahi no, ikamesiku kedakaki koto sahe, ito narabinasi.
注釈257正月二十日ばかりになれば、空もをかしきほどに、風ぬるく吹きて、御前の梅も盛りになりゆく正月二十日ほどの季節描写。六条院春の御殿の庭先の様子。「をかしき空」「風温し」「梅(白梅)の盛り」花の木の蕾」「霞みわたる」、新年正月二十日ころとしては標準的季節描写。4.1.1
注釈258月たたば御いそぎ近く以下「試みたまへ」まで、源氏の紫の上への詞。来月になったら、朱雀院五十賀の準備でなにかと忙しくなるから、その前にという配慮。4.1.2
注釈259寝殿に渡したてまつりたまふ紫の上を女三の宮のいる寝殿へ。紫の上に対する丁重な敬語表現。4.1.3
注釈260選りとどめさせたまひて「させ」使役の助動詞。下の「さぶらはせたまふ」の「せ」も同じく使役の助動詞。4.1.4
注釈261赤色に桜の汗衫薄色の織物の衵浮紋の表の袴紅の擣ちたるさま紫の上方の童女の衣裳。『完訳』は「赤色の表着に桜襲の汗衫、薄紫色の織物の衵、浮模様の表袴、それは紅の艶出しをしたもので」と訳す。4.1.5
注釈262女御の御方にも明石女御方の描写に移る。4.1.5
注釈263童は、青色に蘇芳の汗衫、唐綾の表の袴、衵は山吹なる唐の綺を、同じさまに調へたり『完訳』は「女童は、青色の表着に蘇芳襲の汗衫、唐の綾織の表袴、衵は山吹色の唐の綺を、同じようにおそろいで着ている」と訳す。4.1.6
注釈264青丹に柳の汗衫、葡萄染の衵など『完訳』は「青丹の表着に、柳襲の汗衫、葡萄染の衵など」と訳す。4.1.7
4.2
第二段 孫君たちと夕霧を召す


4-2  Genji invites his son Yugiri and grandsons to the concert

4.2.1  廂の中の御障子を放ちて、こなたかなた御几帳ばかりをけぢめにて、中の間は、院のおはしますべき御座よそひたり。今日の拍子合はせには童べを召さむとて、右の大殿の三郎、尚侍の君の御腹の兄君、笙の笛、左大将の御太郎、横笛と吹かせて、簀子にさぶらはせたまふ。
 廂の中の御障子を取り外して、あちらとこちらと御几帳だけを境にして、中の間には、院がお座りになるための御座所を設けてあった。今日の拍子合わせの役には、子供を召そうとして、右の大殿の三郎君、尚侍の君の御腹の兄君、笙の笛、左大将の御太郎君、横笛と吹かせて、簀子に伺候させなさる。
 縁側に近い座敷の襖子からかみをはずして、貴女たちの席は几帳きちょうを隔てにしてあった。中央の室には院の御座おんざが作られてある。今日の拍子合わせの笛の役には子供を呼ぼうとお言いになって、右大臣家の三男で玉鬘たまかずら夫人の生んだ上のほうの子がしょうの役をして、左大将の長男に横笛の役を命じ縁側へ置かれてあった。
  Hisasi no naka no mi-syauzi wo hanati te, konata-kanata mi-kityau bakari wo kedime ni te, naka-no-ma ha, Win no ohasimasu beki o-masi yosohi tari. Kehu no hyausi-ahase ni ha warahabe wo mesa m tote, Migi-no-Ohoidono no Saburau, Kam-no-Kimi no ohom-hara no Ani-Gimi, syau-no-hue, Sa-Daisyau no ohom-Tarau, yokobue to huka se te, sunoko ni saburaha se tamahu.
4.2.2  内には、御茵ども並べて、御琴ども参り渡す。秘したまふ御琴ども、うるはしき紺地の袋どもに入れたる取り出でて、明石の御方に琵琶、紫の上に和琴、女御の君に箏の御琴、宮には、かくことことしき琴はまだえ弾きたまはずやと、あやふくて、例の手馴らしたまへるをぞ、調べてたてまつりたまふ。
 内側には御褥をいくつも並べて、お琴を御方々に差し上げる。秘蔵の御琴類を、いくつもの立派な紺地の袋に入れてあるのを取り出して、明石の御方に琵琶、紫の上に和琴、女御の君に箏のお琴、宮には、このような仰々しい琴はまだお弾きになれないかと、心配なので、いつもの手馴れていらっしゃる琴を調絃して差し上げなさる。
 演奏者のしとねが皆敷かれて、その席へ院の御秘蔵の楽器が紺錦こんにしきの袋などから出されて配られた。明石夫人は琵琶びわ、紫の女王には和琴わごん、女御はそうの十三げんである。宮はまだ名楽器などはお扱いにくいであろうと、平生弾いておいでになるので調子を院がお弾き試みになったのをお配らせになった。院は、
  Uti ni ha, ohom-sitone-domo narabe te, ohom-koto-domo mawiri watasu. Hisi tamahu ohom-koto-domo, uruhasiki kondi no hukuro-domo ni ire taru tori-ide te, Akasi-no-Ohomkata ni biha, Murasaki-no-Uhe ni wagon, Nyougo-no-Kimi ni syau-no-ohom-koto, Miya ni ha, kaku koto-kotosiki koto ha mada e hiki tamaha zu ya to, ayahuku te, rei no te-narasi tamahe ru wo zo, sirabe te tatematuri tamahu.
4.2.3  「 箏の御琴は、ゆるぶとなけれど、なほ、かく物に合はする折の調べにつけて、琴柱の立処乱るるものなり。よくその心しらひ調ふべきを、女はえ張りしづめじ。なほ、大将をこそ召し寄せつべかめれ。この笛吹ども、まだいと幼げにて、拍子調へむ頼み強からず」
 「箏のお琴は、弛むというわけではないが、やはり、このように合奏する時の調子によって、琴柱の位置がずれるものだ。よくその点を考慮すべきだが、女性の力ではしっかりと張ることはできまい。やはり、大将を呼んだ方がよさそうだ。この笛吹く人たちも、まだ幼いようで、拍子を合わせるには頼りにならない」
 「そうことは絃がゆるむわけではないが、他の楽器と合わせる時に琴柱ことじの場所が動きやすいものなのだから、初めからその心得でいなければならないが、女の力では十分締めることがむずかしいであろうから、やはりこれは大将に頼まなければなるまい。それに拍子を受け持っている少年たちもあまり小さくて信用のできない点もあるから」
  "Syau-no-ohom-koto ha, yurubu to nakere do, naho, kaku mono ni ahasuru wori no sirabe ni tuke te, kotodi no tatido midaruru mono nari. Yoku sono kokoro-sirahi totonohu beki wo, womna ha e hari-sidume zi. Naho, Daisyau wo koso mesi-yose tu beka' mere. Kono hue huki-domo, mada ito wosanage ni te, hyausi totonohe m tanomi tuyokara zu."
4.2.4  と 笑ひたまひて
 とお笑いになって、
 とお笑いになりながら、
  to warahi tamahi te,
4.2.5  「 大将、こなたに
 「大将、こちらに」
 「大将にこちらへ」
  "Daisyau, konata ni."
4.2.6  と召せば、御方々恥づかしく、心づかひしておはす。明石の君を放ちては、いづれも皆捨てがたき御弟子どもなれば、御心加へて、大将の聞きたまはむに、難なかるべくと思す。
 とお呼びになるので、御方々はきまり悪く思って、緊張していらっしゃる。明石の君を除いては、どなたも皆捨てがたいお弟子たちなので、お気を遣われて、大将がお聞きになるので、難点がないようにとお思いになる。
 とお呼び出しになるのを聞いて、夫人たちは恥ずかしく思っていた。明石夫人以外は皆院の御弟子なのであるから、院も大将が聞いて難のないようにとできばえを祈っておいでになった。
  to mese ba, ohom-Kata-gata hadukasiku, kokoro-dukahi si te ohasu. Akasi-no-Kimi wo hanati te ha, idure mo mina sute gataki mi-desi-domo nare ba, mi-kokoro kuhahe te, Daisyau no kiki tamaha m ni, nan nakaru beku to obosu.
4.2.7  「 女御は、常に上の聞こし召すにも、物に合はせつつ弾きならしたまへれば、うしろやすきを、 和琴こそ、いくばくならぬ調べなれど、あと定まりたることなくて、なかなか女のたどりぬべけれ。 春の琴の音は、皆掻き合はするものなるを、乱るるところもや」
 「女御は、ふだん主上がお聞きあそばすにも、楽器に合わせながら弾き馴れていらっしゃるので、安心だが、和琴は、たいして変化のない音色なのだが、奏法に決まった型がなくて、かえって女性は弾き方にまごつくに違いないのだ。春の琴の音色は、おおよそ合奏して聞くものであるから、他の楽器と合わないところが出て来ようかしら」
 女御は平生から陛下の前で他の人と合奏も仕れているからだいじょうぶ落ち着いた演奏はできるであろうが、和琴というものはむずかしい物でなく、きまったことがないだけ創作的の才が必要なのを、女の弾き手はもてあましはせぬか、春の絃楽は皆しっくり他に合ってゆかねばならぬものであるが、和琴がうまくいっしょになってゆかぬようなことはないか
  "Nyougo ha, tune ni Uhe no kikosi-mesu ni mo, mono ni ahase tutu hiki narasi tamahe re ba, usiro-yasuki wo, wagon koso, ikubaku nara nu sirabe nare do, ato sadamari taru koto naku te, naka-naka womna no tadori nu bekere. Haru no koto no ne ha, mina kaki-ahasuru mono naru wo, midaruru tokoro mo ya."
4.2.8  と、 なまいとほしく思す
 と、何となく気がかりにお思いになる。
 とも損な弾き手に同情もしておいでになった。
  to, nama itohosiku obosu.
注釈265箏の御琴は以下「頼み強からず」まで、源氏の詞。4.2.3
注釈266笑ひたまひて苦笑に近い笑い。4.2.4
注釈267大将こなたに源氏の詞。4.2.5
注釈268女御は以下「乱るるところもや」まで、源氏の心中。初め地の文と融合した叙述、やがて心中文として明確化。4.2.7
注釈269和琴こそ係助詞「こそ」は「たどりぬべけれ」に係る。4.2.7
注釈270春の琴の音は皆掻き合はするものなるを『集成』は「春の琴(絃楽器)の音色は、総じて合奏して聞くものと決っているものだが、の意に解されるが、古来不審とされている。河内本「さるものと琴の音は」」と注す。4.2.7
注釈271なまいとほしく思す『集成』は「何となく気がかりに」。『完訳』は「いささか心苦しくお思いになる」と訳す。4.2.8
4.3
第三段 夕霧、箏を調絃す


4-3  Yugiri strings the sou-no-koto

4.3.1  大将、 いといたく心懸想して、御前のことことしく、うるはしき御試みあらむよりも、今日の心づかひは、ことにまさりておぼえたまへば、 あざやかなる御直衣、香にしみたる御衣ども、袖いたくたきしめて、引きつくろひて参りたまふほど、暮れ果てにけり。
 大将は、とてもたいそう緊張して、御前での大がかりな、改まった御試楽以上に、今日の気づかいは、格別に勝って思われなさったので、鮮やかなお直衣に、香のしみたいく重ものお召し物で、袖に特に香をたきしめて、化粧して参上なさるころ、日はすっかり暮れてしまった。
 左大将は晴れがましくて、音楽会のいかなる場合に立ち合うよりも気のつかわれるふうで、きれいな直衣のうし薫香たきものの香のよくんだ衣服に重ねて、なおもそでをたきしめることを忘れずに整った身姿みなりのこの人が現われて来たころはもう日が暮れていた。
  Daisyau, ito itaku kokoro-gesau si te, o-mahe no koto-kotosiku, uruhasiki ohom-kokoromi ara m yori mo, kehu no kokoro-dukahi ha, koto ni masari te oboye tamahe ba, azayaka naru ohom-nahosi, kau ni simi taru ohom-zo-domo, sode itaku taki-sime te, hiki-tukurohi te mawiri tamahu hodo, kure hate ni keri.
4.3.2   ゆゑあるたそかれ時の空に、花は去年の古雪思ひ出でられて、枝もたわむばかり咲き乱れたり。ゆるるかにうち吹く風に、えならず匂ひたる御簾の内の香りも吹き合はせて、 鴬誘ふつまにしつべく、いみじき御殿のあたりの匂ひなり。御簾の下より、箏の御琴のすそ、すこしさし出でて、
 趣深い夕暮の空に、花は去年の古雪を思い出されて、枝も撓むほどに咲き乱れている。緩やかに吹く風に、何とも言えず素晴らしく匂っている御簾の内側の薫りも一緒に漂って、鴬を誘い出すしるべにできそうな、たいそう素晴らしい御殿近辺の匂いである。御簾の下から箏のお琴の裾、少しさし出して、
感じのよい早春の黄昏たそがれの空の下に梅の花は旧年に見た雪ほどたわわに咲いていた。ゆるやかな風の通り通うごとに御簾みすの中の薫香たきものの香も梅花のにおいを助けるように吹き迷ってうぐいすを誘うかと見えた。御簾の下のほうからそうことのさきのほうを少しお出しになって、院が、
  Yuwe aru tasokare-doki no sora ni, hana ha kozo no huru-yuki omohi-ide rare te, yeda mo tawamu bakari saki midare tari. Yururuka ni uti-huku kaze ni, e nara zu nihohi taru mi-su no uti no kawori mo huki ahase te, uguhisu sasohu tuma ni si tu beku, imiziki otodo no atari no nihohi nari. Mi-su no sita yori, syau no ohom-koto no suso, sukosi sasi-ide te,
4.3.3  「 軽々しきやうなれど、これが緒調へて、調べ試みたまへ。ここにまた疎き人の入るべきやうもなきを」
 「失礼なようですが、この絃を調節して、みてやって下さい。ここには他の親しくない人を入れることはできないものですから」
 「失礼だがこのいとの締まりぐあいをよく見て調音をしてほしい。他人に来てもらうことのできない場合だから」
  "Karu-garusiki yau nare do, kore ga wo totonohe te, sirabe kokoromi tamahe. Koko ni mata utoki hito no iru beki yau mo naki mono wo."
4.3.4  とのたまへば、うちかしこまりて賜はりたまふほど、 用意多くめやすくて、「 壱越調」の声に発の緒を立てて、ふとも調べやらでさぶらひたまへば、
 とおっしゃると、礼儀正しくお受け取りになる態度、心づかいも行き届いていて立派で、「壱越調」の音に発の緒を合わせて、すぐには弾き始めずに控えていらっしゃるので、
 とお言いになると、大将はうやうやしく琴を受け取って、一越いっこつ調のはついとの標準のを置き全体を弾き試みることはせずにそのまま返そうとするのを院は御覧になって、
  to notamahe ba, uti-kasikomari te tamahari tamahu hodo, youi ohoku meyasuku te, Iti-koti-deu no kowe ni hati-no-wo wo tate te, huto mo sirabe-yara de saburahi tamahe ba,
4.3.5  「 なほ、掻き合はせばかりは、手一つ、すさまじからでこそ
 「やはり、調子合わせの曲ぐらいは、一曲、興をそがない程度に」
 「調子をつけるだけの一弾きは気どらずにすべきだよ」
  "Naho, kaki-ahase bakari ha, te hitotu, susamazikara de koso."
4.3.6  とのたまへば、
 とおっしゃるので、
 と院がお言いになった。
  to notamahe ba,
4.3.7  「 さらに、今日の御遊びのさしいらへに、交じらふばかりの手づかひなむ、おぼえずはべりける」
 「まったく、今日の演奏会のお相手に、仲間入りできるような腕前では、ございませんから」
 「今日の会に私がいささかでも音を混ぜますようなだいそれた自信は持っておりません」
  "Sarani, kehu no ohom-asobi no sasi-irahe ni, mazirahu bakari no te-dukahi nam, oboye zu haberi keru."
4.3.8  と、 けしきばみたまふ
 と、思わせぶりな態度をなさる。
 大将は遠慮してこう言う。
  to, kesikibami tamahu.
4.3.9  「 さもあることなれど、女楽にえことまぜでなむ逃げにけると、伝はらむ名こそ惜しけれ」
 「もっともな言い方だが、女楽の相手もできずに逃げ出したと、噂される方が不名誉だぞ」
 「もっともだけれども、女だけの音楽に引きさがった、逃げたと言われるのは不名誉だろう」
  "Samo aru koto nare do, womna-gaku ni e koto-maze de nam nige ni keru to, tutahara m na koso wosikere."
4.3.10  とて 笑ひたまふ
 と言ってお笑いになる。
 院はお笑いになった。
  tote warahi tamahu.
4.3.11  調べ果てて、をかしきほどに掻き合はせばかり弾きて、参らせたまひつ。この御孫の君達の、いとうつくしき 宿直姿どもにて、吹き合はせたる物の音ども、まだ若けれど、生ひ先ありて、いみじくをかしげなり。
 調絃を終わって、興をそそる程度に調子合わせだけを弾いて、差し上げなさった。このお孫の君たちが、とてもかわいらしい宿直姿で、笛を吹き合わせている音色は、まだ幼い感じだが、将来性があって、素晴らしく聞こえる。
 で大将は調子をかき合わせて、それだけで御簾みすの中へ入れた。院の御孫にあたる小さい人たちが美しい直衣のうし姿をして吹き合わせる笛の音はまだ幼稚ではあるが、有望な未来の思われる響きであった。
  Sirabe-hate te, wokasiki hodo ni kaki-ahase bakari hiki te, mawira se tamahi tu. Kono ohom-mumago no kimi-tati no ito utukusiki tonowi-sugata-domo ni te, huki-ahase taru mono no ne-domo, mada wakakere do, ohisaki ari te, imiziku wokasige nari.
注釈272あざやかなる御直衣香にしみたる御衣ども袖いたくたきしめて引きつくろひて夕霧の化粧した姿。すっきりした御直衣に香をたきしめる。特に袖に深く香をたきしめる。身動きのたびにもっとも香が発しやすい所だからである。4.3.1
注釈273ゆゑあるたそかれ時の空に花は去年の古雪思ひ出でられて枝もたわむばかり咲き乱れたり正月二十日ころ、夕暮時に、白梅が雪かと見間違えられるほに満開に咲いている様子。4.3.2
注釈274鴬誘ふ明融臨模本、合点と付箋「花のかを風のたよりにたくへてそ鴬さそふしるへにはやる」(古今集春上、一三、紀友則)。『源氏釈』に初指摘、諸注指摘する。4.3.2
注釈275軽々しきやうなれど以下「人の入るべきやうはなきを」まで、源氏の詞。4.3.3
注釈276用意多くめやすくて『集成』は「いかにもたしなみ深く、非の打ち所のない所作で」。『完訳』は「心づかいも行き届いていかにも好ましく」と訳す。4.3.4
注釈277壱越調の声に発の緒を立てて「壱越調」は雅楽の六調子の一つ。「発の緒」は箏の琴の調絃で、調子の基準音にする絃。4.3.4
注釈278なほ掻き合はせばかりは手一つすさまじからでこそ源氏の詞。『集成』は「興を殺がなぬように。お愛想までに、掻き合せくらいは一曲弾いてみなさい、というほどの意」と注す。4.3.5
注釈279さらに今日の御遊びの以下「おぼえずはべりける」まで、夕霧の詞。言葉では遠慮しながら、態度はもったいぶった様子。4.3.7
注釈280けしきばみたまふ『集成』は「勿体ぶったご挨拶をなさる」と訳す。4.3.8
注釈281さもあることなれど以下「名こそ惜しけれ」まで、源氏の詞。夕霧をからかう。4.3.9
注釈282笑ひたまふ冗談の後の笑い。4.3.10
注釈283宿直姿ども宮中で宿直するときに直衣を着るので、いま夜でもあるので、こう表現したもの。4.3.11
出典12 鴬誘ふ 花の香を風の便りにたぐへてぞ鴬誘ふしるべにはやる 古今集春上-一三 紀友則 4.3.2
校訂10 いと いと--(/+いと) 4.3.1
4.4
第四段 女四人による合奏


4-4  A concert begins by four ladies at Rokujo-in

4.4.1   御琴どもの調べども調ひ果てて、掻き合はせたまへるほど、いづれとなき中に、琵琶はすぐれて上手めき、 神さびたる手づかひ、澄み果てておもしろく聞こゆ
 それぞれのお琴の調絃が終わって、合奏なさる時、どれも皆優劣つけがたい中で、琵琶は特別上手という感じで、神々しい感じの弾き方、音色が澄みきって美しく聞こえる。
 かき合わせが済んでいよいよ合奏になったが、どれもおもしろく思われた中に、琵琶びわはすぐれた名手であることが思われ、神さびたばち使いで澄み切った音をたてていた。
  Ohom-koto-domo no sirabe-domo totonohi-hate te, kaki-ahase tamahe ru hodo, idure to naki naka ni, biha ha sugurete zyauzu-meki, kamisabi taru te-dukahi, sumi-hate te omosiroku kikoyu.
4.4.2  和琴に、大将も耳とどめたまへるに、 なつかしく愛敬づきたる御爪音に、掻き返したる音の、めづらしく今めきて、さらにこのわざとある上手どもの、おどろおどろしく掻き立てたる調べ調子に劣らず、にぎははしく、「 大和琴にもかかる手ありけり」と聞き驚かる。深き御労のほどあらはに聞こえて、おもしろきに、大殿御心落ちゐて、いとありがたく思ひきこえたまふ。
 和琴に、大将も耳を留めていらっしゃるが、やさしく魅力的な爪弾きに、掻き返した音色が、珍しく当世風で、まったくこの頃名の通った名人たちが、ものものしく掻き立てた曲や調子に負けず、華やかで、「大和琴にもこのような弾き方があったのか」と感嘆される。深いお嗜みのほどがはっきりと分かって、素晴らしいので、大殿はご安心なさって、またとない方だとお思い申し上げなさる。
 大将は和琴に特別な関心を持っていたが、それはなつかしい、柔らかな、愛嬌あいきょうのある爪音つまおとで、逆にかく時の音が珍しくはなやかで、大家のもったいらしくして弾くのに少しも劣らない派手はでな音は、和琴にもこうした弾き方があるかと大将の心は驚かされた。深く精進を積んだ跡がよく現われたことによって院は安心をあそばされて夫人をうれしくお思いになった。
  Wagon ni, Daisyau mo mimi todome tamahe ru ni, natukasiku aigyau-duki taru ohom-tumaoto ni, kaki-kahesi taru ne no, medurasiku imameki te, sarani kono waza to aru zyauzu-domo no, odoro-odorosiku kaki-tate taru sirabe teusi ni otora zu, nigihahasiku, "Yamatogoto ni mo kakaru te ari keri." to kiki odoroka ru. Hukaki go-rau no hodo araha ni kikoye te, omosiroki ni, Otodo mi-kokoro oti-wi te, ito arigataku omohi kikoye tamahu.
4.4.3  箏の御琴は、 ものの隙々に、心もとなく漏り出づる物の音がらにて、うつくしげになまめかしくのみ聞こゆ
 箏のお琴は、他の楽器の音色の合間合間に、頼りなげに時々聞こえて来るといった性質の音色のものなので、可憐で優美一筋に聞こえる。
 十三絃の琴は他の楽器の音の合い間合い間に繊細な響きをもたらすのが特色であって、女御の爪音つまおとはその中にもきわめて美しくえんに聞こえた。
  Syau-no-ohom-koto ha, mono no hima-hima ni, kokoro-motonaku mori-iduru mono no ne-gara ni te, utukusige ni namamekasiku nomi kikoyu.
4.4.4   琴は、なほ若き方なれど、習ひたまふ盛りなれば、たどたどしからず、いとよくものに響きあひて、「 優になりにける御琴の音かな」と、大将聞きたまふ。拍子とりて 唱歌したまふ。院も、時々扇うち鳴らして、加へたまふ御声、 昔よりもいみじくおもしろく、すこしふつつかに、ものものしきけ添ひて聞こゆ大将も、声いとすぐれたまへる人にて、夜の静かになりゆくままに、言ふ限りなくなつかしき夜の御遊びなり。
 琴の琴は、やはり未熟ではあるが、習っていらっしゃる最中なので、あぶなげなく、たいそう良く他の楽器の音色に響き合って、「随分と上手になったお琴の音色だな」と、大将はお聞きになる。拍子をとって唱歌なさる。院も、時々扇を打ち鳴らして、一緒に唱歌なさるお声、昔よりもはるかに美しく、少し声が太く堂々とした感じが加わって聞こえる。大将も、声はたいそう勝れていらっしゃる方で、夜が静かになって行くにつれて、何とも言いようのない優雅な夜の音楽会である。
 琴は他に比べては洗練の足らぬ芸と思われたが、お若い稽古けいこ盛りの年ごろの方であったから、確かな弾き方はされて、ほかの楽器と交響する音もよくて、上達されたものであると大将も思った。この人が拍子を取って歌を歌った。院も時々扇を鳴らしてお加えになるお声が昔よりもまたおもしろく思われた。少し無技巧的におなりになったようである。大将も美音の人で、夜のふけてゆくにしたがって音楽三昧ざんまいの境地が作られていった。
  Kin ha, naho wakaki kata nare do, narahi tamahu sakari nare ba, tado-tadosikara zu, ito yoku mono ni hibiki-ahi te, "Iu ni nari ni keru ohom-koto no ne kana!" to, Daisyau kiki tamahu. Hyausi tori te sauga si tamahu. Win mo, toki-doki ahugi uti-narasi te, kuhahe tamahu ohom-kowe, mukasi yori mo imiziku omosiroku, sukosi hututuka ni, mono-monosiki ke sohi te kikoyu. Daisyau mo, kowe ito sugure tamahe ru hito ni te, yo no siduka ni nari-yuku mama ni, ihu kagiri naku natukasiki yo no ohom-asobi nari.
注釈284御琴どもの調べども調ひ果てて以下、女楽が始まる。4.4.1
注釈285神さびたる手づかひ澄み果てておもしろく聞こゆ明石御方の琵琶。住吉の神の縁で「神さびたる」と表現。『集成』は「由緒ある古風な撥さばきが、澄みきった音色で」。『完訳』は「年功を積んだ神々しいまでの弾きようが、音色も澄みとおるようなみごとさでおもしろく聞こえる」と訳す。4.4.1
注釈286なつかしく愛敬づきたる御爪音に、掻き返したる音の、めづらしく今めきて紫の上の和琴。「なつかし」「今めかし」は紫の上の人柄を特徴づける語句。4.4.2
注釈287大和琴にもかかる手ありけり源氏の感想。紫の上の和琴に感嘆。4.4.2
注釈288ものの隙々に心もとなく漏り出づる物の音がらにてうつくしげになまめかしくのみ聞こゆ明石女御の箏の琴。「うつくしげ」「なまめかし」」は女御の可憐な人柄を表す語句。『完訳』は「他の楽器の合間合間に、おぼつかなく聞こえてくる性質の音色なので」と訳す。4.4.3
注釈289琴はなほ若き方なれど習ひたまふ盛りなればたどたどしからず女三の宮の琴の琴。その音色に人柄が反映されてない。あるとすれば、「若し」の未熟という人柄。未熟な技量だが、練習中なので、あぶなげなかった。4.4.4
注釈290優になりにける御琴の音かな夕霧の感想。4.4.4
注釈291唱歌したまふ旋律を譜で歌うこと。4.4.4
注釈292昔よりもいみじくおもしろくすこしふつつかにものものしきけ添ひて聞こゆ源氏の声、昔以上に美しくかつ堂々とした感じも加わって聞こえる。4.4.4
注釈293大将も声いとすぐれたまへる人にて夕霧も声のすぐれた人。他に柏木の弟紅梅大納言が上手と言われている(賢木)。4.4.4
4.5
第五段 女四人を花に喩える


4-5  The four ladies are compared to flowers

4.5.1   月心もとなきころなれば、灯籠こなたかなたに懸けて、火よきほどに灯させたまへり。
 月の出が遅いころなので、灯籠をあちらこちらに懸けて、明かりを調度良い具合に灯させていらっしゃった。
 月がややおそく出るころであったから、燈籠とうろうが庭のそこここにともされた。
  Tuki kokoro-motonaki koro nare ba, touro konata-kanata ni kake te, hi yoki hodo ni tomosa se tamahe ri.
4.5.2  宮の御方を覗きたまへれば、人よりけに 小さくうつくしげにて、ただ御衣のみある心地す匂ひやかなる方は後れて、ただいとあてやかにをかしく二月の中の十日ばかりの青柳の、わづかに枝垂りはじめたらむ心地して、鴬の羽風にも乱れぬべく、あえかに見えたまふ
 宮の御方をお覗きになると、他の誰よりも一段と小さくかわいらしげで、ただお召し物だけがあるという感じがする。つややかな美しさは劣るが、ただとても上品に美しく、二月の二十日頃の青柳が、ようやく枝垂れ始めたような感じがして、鴬の羽風にも乱れてしまいそうなくらい、弱々しい感じにお見えになる。
 院が宮の席をおのぞきになると、人よりも小柄なお姿は衣服だけが美しく重なっているように見えた。はなやかなお顔ではなくて、ただ貴族らしいお美しさが備わり、二月二十日ごろの柳の枝がわずかな芽の緑を見せているようで、うぐいすの羽風にも乱れていくかと思われた。
  Miya no ohom-kata wo nozoki tamahe re ba, hito yori keni tihisaku utukusige ni te, tada ohom-zo nomi aru kokoti su. Nihohiyaka naru kata ha okure te, tada ito ate-yaka ni wokasiku, Ni-gwati no naka no towo-ka bakari no awo-yagi no, waduka ni sidari hazime tara m kokoti si te, uguhisu no ha-kaze ni mo midare nu beku, ayeka ni miye tamahu.
4.5.3  桜の細長に、御髪は左右よりこぼれかかりて、 柳の糸のさましたり
 桜襲の細長に、御髪は左右からこぼれかかって、柳の糸のようであった。
 桜の色の細長を着ておいでになるのであるが、髪は右からも左からもこぼれかかってそれも柳の糸のようである。
  Sakura no hosonaga ni, mi-gusi ha hidari migi yori kobore kakari te, yanagi no ito no sama si tari.
4.5.4  「 これこそは、限りなき人の御ありさまなめれ」と見ゆるに、女御の君は、 同じやうなる御なまめき姿の、今すこし匂ひ加はりて、もてなしけはひ心にくく、よしあるさましたまひて、 よく咲きこぼれたる藤の花の、夏にかかりて、かたはらに並ぶ花なき、朝ぼらけの心地ぞしたまへる
 「この方こそは、この上ないご身分の方のご様子というものだろう」と見えるが、女御の君は、同じような優美なお姿で、もう少し生彩があって、態度や雰囲気が奥ゆかしく、風情のあるご様子でいらっしゃって、美しく咲きこぼれている藤の花が、夏に咲きかかって、他に並ぶ花がない、朝日に輝いているような感じでいらっしゃった。
 これこそ最上の女の姿というものであろうと院はおながめになるのであったが、女御には同じようなえんな姿に今一段光る美の添って見える所があって、身のとりなしに気品のあるのは、咲きこぼれたふじの花が春から夏に続いて咲いているころの、他に並ぶもののない優越した朝ぼらけの趣であると院は御覧になった。
  "Kore koso ha, kagiri naki hito no mi-arisama na' mere." to miyuru ni, Nyougo-no-Kimi ha, onazi yau naru ohom-namameki sugata no, ima sukosi nihohi kuhahari te, motenasi kehahi kokoronikuku, yosi aru sama si tamahi te, yoku saki kobore taru hudi-no-hana no, natu ni kakari te, katahara ni narabu hana naki, asaborake no kokoti zo si tamahe ru.
4.5.5  さるは、 いとふくらかなるほどになりたまひて、悩ましくおぼえたまひければ、御琴もおしやりて、脇息におしかかりたまへり。 ささやかになよびかかりたまへるに、御脇息は例のほどなれば、およびたる心地してことさらに小さく作らばやと見ゆるぞ、 いとあはれげにおはしける
 とは言え、とてもふっくらとしたころにおなりになって、ご気分もすぐれない時期でいらっしゃったので、お琴も押しやって、脇息に寄りかかっていらっしゃった。小柄なお身体でなよなよとしていらっしゃるが、ご脇息は並の大きさなので、無理に背伸びしている感じで、特別に小さく作って上げたいと見えるのが、とてもおかわいらしげにお見えになるのであった。
 この人は身ごもっていて、それがもうかなりに月が重なって悩ましいころであったから、済んだあとでは琴を前へ押しやって苦しそうに脇息きょうそくへよりかかっているのであるが、背の高くない身体からだを少し伸ばすようにして、普通の大きさの脇息へ寄っているのが気の毒で、低いのを作り与えたい気もされてあわれまれた。紅梅の上着の上にはらはらと髪のかかったかげの姿の美しい横に、紫夫人が見えた。
  Saruha, ito hukuraka naru hodo ni nari tamahi te, nayamasiku oboye tamahi kere ba, ohom-koto mo osiyari te, kehusoku ni osi-kakari tamahe ri. Sasayaka ni nayobi kakari tamahe ru ni, ohom-kehusoku ha rei no hodo nare ba, oyobi taru kokoti si te, kotosara ni tihisaku tukura baya to miyuru zo, ito aharege ni ohasi keru.
4.5.6   紅梅の御衣に、御髪のかかりはらはらときよらにて、火影の御姿、世になくうつくしげなるに紫の上は、葡萄染にやあらむ、色濃き小袿、薄蘇芳の細長に、御髪のたまれるほど、こちたくゆるるかに、大きさなどよきほどに、様体あらまほしく、 あたりに匂ひ満ちたる心地して花といはば桜に喩へても、なほものよりすぐれたるけはひ、ことにものしたまふ
 紅梅襲のお召物に、お髪がかかってさらさらと美しくて、灯台の光に映し出されたお姿、またとなくかわいらしげだが、紫の上は、葡萄染であろうか、色の濃い小袿に、薄蘇芳襲の細長で、お髪がたまっている様子、たっぷりとゆるやかで、背丈などちょうど良いぐらいで、姿形は申し分なく、辺り一面に美しさが満ちあふれている感じがして、花と言ったら桜に喩えても、やはり衆に抜ん出た様子、格別の風情でいらっしゃる。
 これは紅紫かと思われる濃い色の小袿こうちぎに薄臙脂えんじの細長を重ねたすそに余ってゆるやかにたまった髪がみごとで、大きさもいい加減な姿で、あたりがこの人の美から放射される光で満ちているような女王にょおうは、花にたとえて桜といってもまだあたらないほどの容色なのである。
  Koubai no ohom-zo ni, mi-gusi no kakari hara-hara to kiyora ni te, hokage no ohom-sugata, yo ni naku utukusige naru ni, Murasaki-no-Uhe ha, ebizome ni ya ara m, iro koki koutiki, usu-suhau no hosonaga ni, mi-gusi no tamare ru hodo, kotitaku yururuka ni, ohokisa nado yoki hodo ni, yaudai aramahosiku, atari ni nihohi miti taru kokoti si te, hana to iha ba sakura ni tatohe te mo, naho mono yori sugure taru kehahi, koto ni monosi tamahu.
4.5.7   かかる御あたりに、明石はけ圧さるべきを、いとさしもあらずもてなしなどけしきばみ恥づかしく、心の底ゆかしきさまして、そこはかとなくあてになまめかしく見ゆ。
 このような方々の中で、明石は圧倒されてしまうところだが、まったくそのようなことはなく、態度なども意味ありげにこちらが恥ずかしくなるくらいで、心の底を覗いてみたいほどの深い様子で、どことなく上品で優雅に見える。
 こんな人たちの中に混じって明石夫人は当然見劣りするはずであるが、そうとも思われぬだけの美容のある人で、聡明そうめいらしい品のよさが見えた。
  Kakaru ohom-atari ni, Akasi ha keosaru beki wo, ito sasimo ara zu, motenasi nado kesikibami hadukasiku, kokoro no soko yukasiki sama si te, sokohakatonaku ate ni namamekasiku miyu.
4.5.8   柳の織物の細長、萌黄にやあらむ、小袿着て、羅の裳のはかなげなる引きかけて、ことさら卑下したれど、けはひ、思ひなしも、心にくくあなづらはしからず。
 柳の織物の細長に、萌黄であろうか、小袿を着て、羅の裳の目立たないのを付けて、特に卑下していたが、その様子、そうと思うせいもあって、立派で軽んじられない。
 柳の色の厚織物の細長に下へ萌葱もえぎかと思われる小袿こうちぎを着て、薄物の簡単なをつけて卑下した姿も感じがよくてあなずらわしくは少しも見えなかった。
  Yanagi no ori-mono no hosonaga, moyegi ni ya ara m, koutiki ki te, usumono no mo no hakanage naru hiki-kake te, kotosara hige si tare do, kehahi, omohi-nasi mo, kokoro-nikuku anadurahasikara zu.
4.5.9  高麗の青地の錦の端さしたる茵に、まほにもゐで、琵琶をうち置きて、ただけしきばかり弾きかけて、たをやかに使ひなしたる撥のもてなし、音を聞くよりも、またありがたくなつかしくて、 五月待つ花橘、花も実も具しておし折れる薫りおぼゆ。
 高麗の青地の錦で縁どりした敷物に、まともに座らず、琵琶をちょっと置いて、ほんの心持ばかり弾きかけて、しなやかに使いこなした撥の扱いよう、音色を聞くやいなや、また比類なく親しみやすい感じがして、五月待つ花橘の、花も実もともに折り取った薫りのように思われる。
 青地の高麗錦こまにしきふちを取った敷き物の中央にもすわらずに琵琶びわを抱いて、きれいに持ったばちさきいとの上に置いているのは、音を聞く以上に美しい感じの受けられることであって、五月さつきたちばなの花も実もついた折り枝が思われた。
  Koma no awodi no nisiki no hasi sasi taru sitone ni, maho ni mo wi de, biha wo uti-oki te, tada kesiki bakari hiki-kake te, tawoyaka ni tukahi-nasi taru bati no motenasi, ne wo kiku yori mo, mata arigataku natukasiku te, Satuki matu hana-tatibana, hana mo mi mo gu-si te osi-wore ru kawori oboyu.
注釈294月心もとなきころなれば後に「臥待の月」とある。4.5.1
注釈295小さくうつくしげにてただ御衣のみある心地す女三の宮の小柄を強調した表現。4.5.2
注釈296匂ひやかなる方は後れてただいとあてやかにをかしく女三の宮は美しさよりも気品高貴さが特徴。『集成』は「つややかな美しさといった点は劣るが、気品があって美しく」。『完訳』は「つやつやした美しさという点は劣るが、ただまことに気品があって美しく」と訳す。4.5.2
注釈297二月の中の十日ばかりの青柳のわづかに枝垂りはじめたらむ心地して鴬の羽風にも乱れぬべくあえかに見えたまふ女三の宮を植物に喩える。『紫式部日記』に小少将の君を描写したのと類似の文章がある。『河海抄』は「白雪の花繁くして空しく地を撲つ緑糸の条弱くして鴬に勝へず」(白氏文集、巻第六十四、楊柳枝詞八首の第三首)と「鴬の羽風になびく青柳の乱れてものを思ふころかな」(具平親王集)を指摘。4.5.2
注釈298柳の糸のさましたり女三の宮の髪の様子。「青柳」の縁で「柳の糸」という。歌語。4.5.3
注釈299これこそは限りなき人の御ありさまなめれ語り手の視点。女三の宮についていう。4.5.4
注釈300同じやうなる御なまめき姿の今すこし匂ひ加はりて明石女御は「なまめき姿」という点では女三の宮と同じだが、女三の宮のもってない「匂ひ」がこちらにはすこしある、という。4.5.4
注釈301よく咲きこぼれたる藤の花の夏にかかりてかたはらに並ぶ花なき朝ぼらけの心地ぞしたまへる明石女御を藤の花に喩える。「野分」巻にも明石女御を藤の花に喩えた描写がある。4.5.4
注釈302いとふくらかなるほどに明石女御、妊娠五月となっている。4.5.5
注釈303ささやかになよびかかりたまへるに御脇息は例のほどなればおよびたる心地して明石女御の姿態。小柄な点では女三の宮と同じ。女三の宮は着物の中に埋まっているという感じで描写、明石女御は脇息に背伸びして寄り掛かっているという描写。4.5.5
注釈304ことさらに小さく作らばや語り手の感想、挿入。4.5.5
注釈305いとあはれげにおはしける『集成』は「とても可憐にお見えになるのだった」。『完訳』は「いかにも痛々しいご様子であった」と訳す。4.5.5
注釈306紅梅の御衣に御髪のかかりはらはらときよらにて火影の御姿世になくうつくしげなるに明石女御の衣裳。紅梅襲。4.5.6
注釈307紫の上は葡萄染にやあらむ語り手の挿入句。上の「なるに」の接続助詞「に」で続ける。『完訳』は「「灯影の御姿」の無類の美貌が共通するとして、紫の上に転ずる」と注す。4.5.6
注釈308あたりに匂ひ満ちたる心地して女三の宮や明石女御にはない紫の上の美質。『集成』は「あたり一面照り映えるほどの美しさで」。『完訳』は「あたり一面につややかな美しさがあふれているような風情」と注す。4.5.6
注釈309花といはば桜に喩へてもなほものよりすぐれたるけはひことにものしたまふ紫の上を桜に喩える。「野分」巻では樺桜に喩えられた。『完訳』は「他に比べようのない桜に喩えてもなお不足。最高の賛辞」と注す。4.5.6
注釈310かかる御あたりに明石はけ圧さるべきをいとさしもあらず語り手の主観を交えた挿入句。明石御方についての描写。4.5.7
注釈311もてなしなどけしきばみ恥づかしく『集成』は「身ごなしなどしゃれていて風格があり」。『完訳』は「物腰など気がきいていて、こちらが恥じ入りたいくらいだし」と訳す。4.5.7
注釈312柳の織物の細長萌黄にやあらむ小袿着て羅の裳のはかなげなる引きかけて明石御方の衣裳。柳襲。薄い織物の裳を付ける。『完訳』は「裳の着用は女房の格。それをさりげなく着て「ことさら卑下」するのが、彼女の一貫した処世態度」と注す。「にやあらむ」は語り手の推測、挿入句。4.5.8
注釈313五月待つ花橘「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」(古今集夏、一三九、読人しらず)による表現。4.5.9
出典13 鴬の羽風 鴬の羽風になびく青柳の乱れて物を思ふころかな 具平親王集-河海抄所引 4.5.2
校訂11 喩へても 喩へても--たとへて(て/+も) 4.5.6
4.6
第六段 夕霧の感想


4-6  Yugiri thinks about four ladies after the concert

4.6.1  これもかれも、 うちとけぬ御けはひどもを聞き見たまふに、大将も、いと内ゆかしくおぼえたまふ。対の上の、見し折よりも、ねびまさりたまへらむありさまゆかしきに、静心もなし。
 この方もあの方も、とりすましたご様子を見たり聞いたりなさると、大将も、まことに中を御覧になりたくお思いになる。対の上が、昔見た時よりも、ずっと美しくなっていっらっしゃるだろう様子が見たいので、心が落ち着かない。
 いずれもつつましくしているらしい内のものの気配けはいに大将の心はかれるばかりであった。紫の女王の美は昔の野分のわきの夕べよりもさらに加わっているに違いないと思うと、ただその一事だけで胸がとどろきやまない。
  Kore mo kare mo, utitoke nu ohom-kehahi-domo wo kiki mi tamahu ni, Daisyau mo, ito uti yukasiku oboye tamahu. Tai-no-Uhe no, mi si wori yori mo, nebi-masari tamahe ra m arisama yukasiki ni, sidu-kokoro mo nasi.
4.6.2  「 宮をば、今すこしの宿世 及ばましかば、わがものにても見たてまつりてまし。心のいとぬるきぞ悔しきや。院は、たびたびさやうにおもむけて、しりう言にものたまはせけるを」と、ねたく思へど、 すこし心やすき方に見えたまふ御けはひにあなづりきこゆとはなけれど、いとしも心は動かざりけり
 「宮を、もう少し運勢があったなら、自分の妻としてお世話申し上げられたであろうに。まことにゆったり構えていたのが悔やまれるよ。院は、度々そのように水を向けられ、蔭でおっしゃっていられたものを」と、残念に思うが、少し軽率なようにお見えになるご様子に、軽くお思い申すと言うのではないが、それほど心は動かなかったのである。
 女三にょさんみやに対しては運命が今少し自分に親切であったなら、自身のものとしてこの方を見ることができたのであったと思うと、自身の臆病おくびょうさも口惜くちおしかった。朱雀すざく院からはたびたびそのお気持ちを示され、それとなく仰せになったこともあったのであるがと思いながらも、よくすきの見えることを知っていては女王に惹かれたほど心は動きもしないのであった。
  "Miya wo ba, ima sukosi no sukuse oyoba masika ba, waga mono ni te mo mi tatematuri te masi. Kokoro no ito nuruki zo kuyasiki ya! Win ha, tabi-tabi sayau ni omomuke te, siriugoto ni mo notamaha se keru wo." to, netaku omohe do, sukosi kokoro-yasuki kata ni miye tamahu ohom-kehahi ni, anaduri kikoyu to ha nakere do, ito simo kokoro ha ugoka zari keri.
4.6.3   この御方をば、何ごとも思ひ及ぶべき方なく、気遠くて、年ごろ過ぎぬれば、「 いかでか、ただおほかたに。心寄せあるさまをも見たてまつらむ」とばかりの、口惜しく嘆かしきなりけり。あながちに、あるまじくおほけなき心地などは、さらにものしたまはず、いとよくもてをさめたまへり。
 こちらの御方を、何事につけても手の届くすべなく、高嶺の花として、長年過ごして来たので、「ただ何とかして、義理の親子の関係として、好意をお寄せ申している気持ちをお見せ申し上げたい」とだけ、残念に嘆かわしいのであった。むやみに、あってはならない大それた考えなどは、まったくおありではなく、実に立派に振る舞っていらっしゃった。
 女王とはだれも想像ができぬほど遠い間隔のある所に置かれている大将は、その忘れがたい感情などは別として、せめて自分の持つ好意だけでも紫の女王に認めてもらうだけを望んでできないのを考えては煩悶はんもんしているのである。あるまじい心などはいだいていない、その思いを抑制することはできる人である。
  Kono ohom-kata wo ba, nani-goto mo omohi oyobu beki kata naku, ke tohoku te, tosi-goro sugi nure ba, "Ikadeka, tada ohokata ni. Kokoro-yose aru sama wo mo mi tatematura m." to bakari no, kutiwosiku nagekasiki nari keri. Anagati ni, arumaziku ohokenaki kokoti nado ha, sarani monosi tamaha zu, ito yoku mote wosame tamahe ri.
注釈314うちとけぬ御けはひどもを『集成』は「たしなみ深い婦人たちのご様子を」。『完訳』は「とりつくろっていらっしゃるご様子を」と訳す。4.6.1
注釈315宮をば今すこしの宿世以下「のたまはせけるを」まで、夕霧の心中。4.6.2
注釈316及ばましかば「ましかば」--「見たてまつらまし」反実仮想の構文。4.6.2
注釈317すこし心やすき方に見えたまふ御けはひに夕霧の見た女三の宮。『集成』は「組しやすいようにお見えになる女三の宮のご様子に」。『完訳』は「多少気のおけない性分の方とお見受けされるご様子だから」と訳す。4.6.2
注釈318あなづりきこゆとはなけれどいとしも心は動かざりけり夕霧の女三宮に対する態度、関心。語り手が評す。4.6.2
注釈319この御方をば何ごとも夕霧の紫の上に対する態度、関心。4.6.3
注釈320いかでかただおほかたに心寄せあるさまをも見たてまつらむ夕霧の心中。紫の上に対する気持ち。
【おほかたに】−『集成』は「家族の一員として」。『完訳』は「ほんの一通りの意味で」と訳す。
4.6.3
Last updated 3/10/2002
渋谷栄一校訂(C)(ver.1-2-3)
Last updated 3/10/2002
渋谷栄一注釈(ver.1-1-3)
Last updated 12/29/2001
渋谷栄一訳(C)(ver.1-2-2)
現代語訳
与謝野晶子
電子化
上田英代(古典総合研究所)
底本
角川文庫 全訳源氏物語
校正・
ルビ復活
門田裕志、小林繁雄(青空文庫)

2004年2月6日

渋谷栄一訳
との突合せ
若林貴幸、宮脇文経

2005年8月14日

Last updated 9/30/2002
Written in Japanese roman letters
by Eiichi Shibuya (C) (ver.1-3-2)
Picture "Eiri Genji Monogatari"(1650 1st edition)
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