34 若菜上(明融臨模本)


WAKANA-NO-ZYAU


光る源氏の准太上天皇時代
三十九歳暮から四十一歳三月までの物語



Tale of Hikaru-Genji's Daijo Tenno era, from the end of 39 to March the age of 41

2
第二章 朱雀院の物語 女三の宮との結婚を承諾


2  Tale of Suzaku  Genji consents to get married to Sam-no-Miya

2.1
第一段 乳母と兄左中弁との相談


2-1  The wet nurse talks with her brother Sachuben

2.1.1   この御後見どもの中に、重々しき御乳母の兄、左中弁なる、 かの院の親しき人にて、年ごろ仕うまつるありけり。 この宮にも心寄せことにてさぶらへば、参りたるにあひて、物語するついでに、
 姫宮のご後見たちの中で、重々しい御乳母の兄、左中弁でいる者で、あちらの院の近臣として、長年仕えている者がいたのであった。こちらの宮にも特別の気持ちを持って仕えているので、参上した折に会って、話をした機会に、
 この中の最も重立った一人の乳母めのとの兄で、左中弁のなにがしは六条院の恩顧を受けて、親しくお出入りしていたが、一方ではこの姫宮を尊敬する伺候者の一人であった。この人の来た時に妹である乳母が朱雀すざく院の御希望を語った。
  Kono ohom-usiromi-domo no naka ni, omo-omosiki ohom-menoto no seuto, Sa-tyuu-ben naru, kano Win no sitasiki hito ni te, tosi-goro tukau-maturu ari keri. Kono miya ni mo kokoro-yose koto ni te saburahe ba, mawiri taru ni ahi te, monogatari suru tuide ni,
2.1.2  「 上なむ、しかしか御けしきありて聞こえたまひしを、かの院に、折あらば漏らしきこえさせたまへ。皇女たちは、独りおはしますこそは例のことなれど、さまざまにつけて心寄せたてまつり、何ごとにつけても、御後見したまふ人あるは頼もしげなり。
 「院の上が、これこれしかじかの御意向があってお洩らしになったが、あちらの院に、機会があったらそれとなくお耳にお入れ申し上げてください。内親王たちは、独身でいらっしゃるのが通例ですが、いろいろなことにつけてご好意をお寄せ申し、どのような事柄につけても、ご後見なさる方がいることは頼もしいことです。
 「この話をあなたから六条院様に機会おりがありましたら申し上げてみてください。内親王様は一生御独身が原則のようですが、婿君としてどんな場合にもお力の借りられる方をお持ちになるのは、御独身の宮様よりも頼もしく思われます。
  "Uhe nam, sika-sika mi-kesiki ari te kikoye tamahi si wo, kano Win ni, wori ara ba morasi kikoye sase tamahe. Miko-tati ha, hitori ohasimasu koso ha rei no koto nare do, sama-zama ni tuke te kokoro-yose tatematuri, nani-goto ni tuke te mo, ohom-usiromi si tamahu hito aru ha tanomosige nari.
2.1.3  上をおきたてまつりて、また真心に思ひきこえたまふべき人もなければ、おのらは、仕うまつるとても、何ばかりの 宮仕へにかあらむ。わが心一つにしもあらで、おのづから思ひの他のこともおはしまし、軽々しき聞こえもあらむ時には、 いかさまにかは、わづらはしからむ御覧ずる世に、ともかくも、この御こと定まりたらば、仕うまつりよくなむあるべき。
 院の上をお置き申しては、また心底からご心配申し上げなさる方もいないので、自分たちは、お仕え申しているが、どれほどのお役に立てましょうか。わたしの一存のままにもならず、自然と思いの他の事もおありになり、浮いた噂が立つような時には、どんなにか厄介なことでしょう。御存命中には、どのような形にせよ、姫宮のお身の上が決まったならば、お仕えしやすいことでしょう。
院のほかに誠意のあるお世話をお受けになる方をお持ちあそばさない宮様ですからね。私がどんなにお愛し申し上げていましても、それは限りのあることしかできないのですもの。それに私一人がお付きしているのでなくておおぜいの人がいるのですから、だれがいつどんな不心得をして失礼な媒介役を勤めるかもしれません。そしてどんな御不幸なことになるかわかりません。院がおいでになりますうちにこの問題が決まりますれば私は安心ができてどんなに楽だろうと思います。
  Uhe wo oki tatematuri te, mata ma-gokoro ni omohi kikoye tamahu beki hito mo nakere ba, onora ha, tukau-maturu tote mo, nani bakari no miya-dukahe ni ka ara m? Waga kokoro hitotu ni simo ara de, onodukara omohi no hoka no koto mo ohasimasi, karu-garusiki kikoye mo ara m toki ni ha, ika sama ni ka ha, wadurahasi kara m. Go-ran-zuru yo ni, tomo-kakumo, kono ohom-koto sadamari tara ba, tukau-maturi yoku nam aru beki.
2.1.4  かしこき筋と聞こゆれど、女は、いと宿世定めがたくおはしますものなれば、よろづに嘆かしく、かくあまたの御中に、取り分ききこえさせたまふにつけても、人の嫉みあべかめるを、いかで 塵も据ゑたてまつらじ
 高貴なご身分と申しても、女は、本当に運命が不安定でいらっしゃいますから、いろいろと心配な上に、このような多くの皇女たちの中で、特別大切にお扱い申されるにつけても、人の妬みもあるでしょうし、何とか少しの瑕もおつけ申すまい」
 尊貴な方でも女の運命は予想することができませんから不安で不安でなりません。幾人いくたりもおいでになる姫宮の中で特別に御秘蔵にあそばすことで、また嫉妬しっとをお受けになることにもなりますから、私は気が気でもありません」
  Kasikoki sudi to kikoyure do, womna ha, ito sukuse sadame gataku ohasimasu mono nare ba, yorodu ni nagekasiku, kaku amata no ohom-naka ni, toriwaki kikoye sase tamahu ni tuke te mo, hito no sonemi a'beka' meru wo, ikade tiri mo suwe tatematura zi."
2.1.5  と語らふに、弁、
 と相談をもちかけると、弁は、

  to katarahu ni, Ben,
2.1.6  「 いかなるべき御ことにかあらむ。院は、あやしきまで御心長く、仮にても見そめたまへる人は、御心とまりたるをも、またさしも 深からざりけるをも、かたがたにつけて尋ね取りたまひつつ、あまた集へきこえたまへれど、やむごとなく思したるは、限りありて、一方なめれば、それにことよりて、かひなげなる住まひしたまふ方々こそは多かめるを、御宿世ありて、もし、さやうにおはしますやうもあらば、 いみじき人と聞こゆとも、立ち並びておしたちたまふことは、えあらじとこそは推し量らるれど、なほ、 いかがと憚らるることありてなむおぼゆる。
 「どのような御事なのでしょうか。院は、不思議なまでお心の変わらない方で、いったんご寵愛なさった女性は、お気に入った方も、またさほど深くなかった方をも、それぞれにつけてお引き取りになっては、大勢お集め申していらっしゃるが、大切にお思いなさる方は、限りがあって、お一方のようなので、そちらに片寄って、寂しい暮らしをしていらっしゃる方々が多いようですが、御宿縁があって、もし、そのようにあそばされるようなことがありましたら、どんなに大切な方と申しても、張り合って押して来られるようなことは、とてもできますまいと想像されますが、やはり、どのようなものかと案じられることがあるように存じられます。
 「お話はしますがよい結果が得られることかどうか。院は御恋愛の上で飽きやすいとか、気がよく変わるとかいうことはない方で、珍しい篤実性を持っておられます。仮にも愛人になすった人は、お気に入った入らぬにかかわらず皆それ相応に居場所を作っておあげになって、幾人いくたりもの御夫人、愛姫というものを持っておいでになるというものの、せんじつめれば愛しておいでになる夫人はお一人だけということになる方がおいでになるのだから、そのために同じ院内においでになるというだけで寂しい思いをして暮らしておられる方も多いようですからね。もし御縁があって姫宮があちらへお移りになった場合には、紫の女王様がどんなにすぐれた奥様でも、これにお勝ちになることは不可能でしょうとは思いますが、あるいは必ずしもそういかない場合も想像されます。
  "Ika naru beki ohom-koto ni ka ara m? Win ha, ayasiki made mi-kokoro nagaku, kari ni te mo mi-some tamahe ru hito ha, mi-kokoro tomari taru wo mo, mata sasimo hukakara zari keru wo mo, kata-gata ni tuke te tadune-tori tamahi tutu, amata tudohe kikoye tamahe re do, yamgotonaku obosi taru ha, kagiri ari te, hito-kata na' mere ba, sore ni koto yori te, kahi nage naru sumahi si tamahu kata-gata koso ha ohoka' meru wo, ohom-sukuse ari te, mosi, sayau ni ohasimasu yau mo ara ba, imiziki hito to kikoyu tomo, tati-narabi te osi-tati tamahu koto ha, e ara zi to koso ha osihakara rure do, naho, ikaga to habakara ruru koto ari te nam oboyuru.
2.1.7  さるは、『 この世の栄え、末の世に過ぎて、身に心もとなきことはなきを、女の筋にてなむ、人のもどきをも負ひ、わが心にも飽かぬこともある 』となむ、常にうちうちのすさびごとにも思しのたまはすなる。
 とはいえ、『この世での栄誉は、末世には過ぎて、身の上に不足はないが、女性関係では、人の非難を受け、自分自身の意に満たないところもある』と、いつも内々の閑談にお気持ちを漏らされるそうです。
 しかしまた院が、自分はすべての幸福に恵まれているが、熱愛では人の批難を受けもしているし、私自身にも不満足を感じる点もあると何かの場合におらしになるが、
  Saruha, "Kono yo no sakaye, suwe-no-yo ni sugi te, mi ni kokoro-motonaki koto ha naki wo, womna no sudi ni te nam, hito no modoki wo mo ohi, waga kokoro ni mo aka nu koto mo aru." to nam, tune ni uti-uti no susabi-goto ni mo obosi notamahasu naru.
2.1.8   げに、おのれらが見たてまつるにも、さなむおはします 。かたがたにつけて、御蔭に隠したまへる人、皆その人ならず立ち下れる際にはものしたまはねど、 限りあるただ人どもにて、院の御ありさまに並ぶべきおぼえ 具したるやはおはすめる
 なるほど、わたくしどもが拝見致しても、そのようでいらっしゃいます。それぞれの御縁で、お世話なさっている方は、みな素姓の分からぬような卑しい身分ではいらっしゃいませんが、たかだか知れた臣下の身分ばかりで、院のご様子に並び得る声望のある方はいらっしゃるだろうか。
 私らとしてもそう思われるふしがないでもない。夫人がたといっても今までの方はただの女性で、内親王がたが一人も混じっておいでになりませんからね。私らとしては院の御身分として姫宮様級の御夫人があってしかるべきだと思われますからね。
  Geni, onorera ga mi tatematuru ni mo, sa nam ohasimasu. Kata-gata ni tuke te, mi-kage ni kakusi tamahe ru hito, mina sono hito nara zu tati-kudare ru kiha ni ha monosi tamaha ne do, kagiri aru tadaudo-domo ni te, Win no ohom-arisama ni narabu beki oboye gu-si taru ya ha ohasu meru.
2.1.9  それに、同じくは、げにさもおはしまさば、 いかにたぐひたる御あはひならむ
 それに、同じ事なら、御意向通りに御降嫁あそばしたら、どんなにお似合いのご夫婦となることでしょう」
 今度のことが実現されたらどんなにすばらしい御夫妻だろう」
  Sore ni, onaziku ha, geni samo ohasimasa ba, ikani taguhi taru ohom-ahahi nara m?"
2.1.10  と 語らふを
 と内情を話したのを、
 と左中弁は言うのであった。
  to katarahu wo,
注釈69この御後見どもの中に女三の宮の乳母。内親王には三人の乳母がつく。2.1.1
注釈70かの院の親しき人にて『完訳』は「六条院の院司か」と注す。2.1.1
注釈71この宮にも女三の宮をさす。2.1.1
注釈72上なむしかしか以下「塵も据ゑたてまつらじ」まで、乳母の詞。「上」は朱雀院をさす。「しかじか」は間接話法が混入。2.1.2
注釈73いかさまにかはわづらはしからむ『集成』は「〔責任上私は〕どんなに迷惑なことでしょう」。『完訳』は「どんなにか厄介なことでしょう」と訳す。2.1.3
注釈74御覧ずる世に主語は朱雀院。2.1.3
注釈75塵も据ゑたてまつらじ「塵をだに据ゑじとぞ思ふ咲きしより妹と我が寝る常夏の花」(古今集夏、一六七、凡河内躬恒)の言葉による。2.1.4
注釈76いかなるべき御ことにかあらむ以下「御あはひならむ」まで、左中弁の詞。2.1.6
注釈77いみじき人と聞こゆとも立ち並びておしたちたまふことはえあらじとこそは推し量らるれど『集成』は「どんなにご寵愛の深い方(紫の上)と申しても、(女三の宮に)張り合って押してこられるようなことは、できないだろうと思われますが」。『完訳』は「いくらたいそうなお方と申しあげたところで、こちらの姫宮と肩を並べて威勢をお張りになるようなことはとてもなされますまい、とは察せられますものの」と訳す。2.1.6
注釈78いかがと憚らるること『集成』は「紫の上の寵愛が並々ならぬことをいう」。『完訳』は「前言を翻し、源氏の紫の上厚遇から、姫宮降嫁への賛意を躊躇」と注す。2.1.6
注釈79この世の栄え末の世に過ぎて身に心もとなきことはなきを女の筋にてなむ人のもどきをも負ひわが心にも飽かぬこともある『集成』は「以下、源氏の述懐を伝える趣」「女性関係では、人からも非難され。六条の御息所や朧月夜の尚侍のことが想起される」「また自分としても意に満たぬこともある。源氏の心中としては、藤壷とのことをはじめとして、女性問題で不如意であったことを言うものと見られる」。『完訳』は「源氏の述懐」「「人のもどき」は六条御息所や朧月夜などによろうが、「飽かぬこと」は藤壷ゆえらしい。ここでの「この世の栄え」と「飽かぬこと」の両面の指摘は、後に繰り返される、繁栄と憂愁の人生とみる述懐と通底」と注す。2.1.7
注釈80げに、おのれらが見たてまつるにも、さなむおはします『完訳』は「弁は、源氏の述懐の真意とは異なって、果せぬ好色心と判断」と注す。2.1.8
注釈81限りあるただ人どもにて皇族の人ではなくて臣下の人たち、という意。2.1.8
注釈82具したるやはおはすめる「やは」反語。「める」推量の助動詞、弁の主観的推量のニュアンス。『集成』は「准太上天皇の身分にふさわしい正夫人のいないことをいう。源氏の述懐を、左中弁なりに解釈したのである。世間の常識として当然のことである」と注す。2.1.8
注釈83いかにたぐひたる御あはひならむ『河海抄』は「窈窕たる淑女は君子の好逑」(詩経、国風)を指摘。2.1.9
注釈84語らふを『集成』は「うち割って話すのを」。『完訳』は「内情をうち割って話してくれるので」と訳す。2.1.10
出典5 塵も据ゑ 塵をだに据ゑじとぞ思ふ咲きしより妹とわが寝る常夏の花 古今集夏-一六七 凡河内躬恒 2.1.4
校訂24 宮仕へ 宮仕へ--みやつかひ(ひ/$へ) 2.1.3
校訂25 深からざりけるをも 深からざりけるをも--ふかゝらさり(り/+ける)をも 2.1.6
校訂26 負ひ 負ひ--おも(も/$)ひ 2.1.7
校訂27 おのれらが おのれらが--をの(の/+れ)らか 2.1.8
2.2
第二段 乳母、左中弁の意見を朱雀院に言上


2-2  The wet nurse leaves Sachuben's view on Genji's mind

2.2.1   乳母、またことのついでに
 乳母が、また別の機会に、
 乳母めのとは何かのことを朱雀すざく院へ申し上げたついでに、自分が試みに前日兄の左中弁へした話を申し上げて、
  Menoto, mata koto no tuide ni,
2.2.2  「 しかしかなむ、なにがしの朝臣にほのめかしはべしかば、『 かの院には、かならず うけひき申させたまひてむ。年ごろの御本意かなひて思しぬべきことなるを、こなたの御許しまことにありぬべくは、伝へきこえむ』となむ申しはべりしを、 いかなるべきことにかははべらむ
 「これこれしかじかの事を、某朝臣にそれとなく話しましたところ、『あちらの院では、きっとご承諾申し上げなさるでしょう。長年のご宿願が叶うとお思いになるはずのことですし、こちらの院の御許可が本当にあるのでしたらお伝え申し上げましょう』と申しておりましたが、どのように致しましょうか。
 「兄が申しますのには院は必ず御承諾あそばされることと思う。六条院は年来の御希望がかなうことと思召おぼしめすに違いない御縁談であるから、こちらのお許しさえあればお伝えいたしましょうと申しました。どういたしたらよろしゅうございましょう。
  "Sika-sika nam, Nanigasi-no-Asom ni honomekasi habe' sika ba, "Kano Win ni ha, kanarazu ukehiki mausa se tamahi te m. Tosi-goro no ohom-ho'i kanahi te obosi nu beki koto naru wo, konata no ohom-yurusi makoto ni ari nu beku ha, tutahe kikoye m." to nam nausi haberi si wo, ika naru beki koto ni ka ha habera m.
2.2.3  ほどほどにつけて、人の際々思しわきまへつつ、ありがたき御心ざまに ものしたまふなれど、ただ人だに、またかかづらひ思ふ人立ち並びたることは、人の飽かぬことにしはべめるを、めざましきこともやはべらむ。御後見望みたまふ人びとは、あまたものしたまふめり。
 身分身分に応じて、夫人それぞれの待遇をお考えになっては、めったにないお心づかいでいらっしゃるようですが、臣下の者でも、自分以外に寵愛を受ける女が横にいることは、誰でも不満に思うことでございますから、心外なことでございましょうかしら。ご後見を希望なさる方は、大勢いらっしゃるようです。
 御愛人にはそれぞれの御身分に応じた御待遇をあそばしまして、思いやりの深いお方様と承りますけれど、普通の女の方でもほかに愛妻のある方と結婚をすることを幸福とはいたさないのでございますから、御不快な思いをあそばすことがないとも思われません。姫宮様をいただきたいと望む人はほかにもたくさんあるのでございますから、
  Hodo-hodo ni tuke te, hito no kiha-giha obosi wakimahe tutu, arigataki mi-kokoro zama ni monosi tamahu mere do, tadaudo dani, mata kakadurahi omohu hito tati-narabi taru koto ha, hito no aka nu koto ni si habe' meru wo, mezamasiki koto mo ya habera m. Ohom-usiromi nozomi tamahu hito-bito ha, amata monosi tamahu meri.
2.2.4  よく思し定めてこそよくはべらめ。限りなき人と聞こゆれど、今の世のやうとては、 皆ほがらかに、あるべかしくて、世の中を御心と過ぐしたまひつべきもおはしますべかめるを、姫宮は、あさましくおぼつかなく、心もとなくのみ見えさせたまふに、さぶらふ人びとは、仕うまつる限りこそはべらめ。
 よくお考えあそばしてお決めになるのがようございましょう。この上ない身分の人と申しても、今の世の中では、みなわだかまりなく、立派に処理して、夫婦仲を考え通りにお過ごしになられる方もいらっしゃるようですが、姫宮は、驚くほど気がかりで、頼りなくお見えでいらっしゃるし、伺候している女房たちは、お仕え申すにも限界がございましょう。
 よくお考えあそばしましてお決めなさいますのがよろしゅうございましょう。宮様は最も尊貴な御身分でいらっしゃいますが、ただ今の世の中ではりりしく独身生活をりっぱにしていく婦人がたもありますのに、三の宮様はどうもその点で御安心申し上げられない強さが欠けておいであそばすのですから、
  Yoku obosi sadame te koso yoku habera me. Kagiri naki hito to kikoyure do, ima no yo no yau tote ha, mina hogaraka ni, aru bekasiku te, yononaka wo mi-kokoro to sugusi tamahi tu beki mo ohasimasu beka' meru wo, Hime-Miya ha, asamasiku obotukanaku, kokoro-motonaku nomi miye sase tamahu ni, saburahu hito-bito ha, tukau-maturu kagiri koso habera me.
2.2.5  おほかたの御心おきてに従ひきこえて、賢しき下人も なびきさぶらふこそ、頼りあることに はべらめ。取り立てたる御後見ものしたまはざらむは、なほ心細きわざになむはべるべき」
 大抵ご主人のご意向にお従い申して、賢明な下々の者もそのお考え通りに従うのが、心丈夫なことでしょう。特別のご後見がいらっしゃらないのは、やはり心細いことでございましょう」
 私たち侍女どもは一所懸命の御奉仕をいたしましても、それはたいした宮様のお力になることでもございませんから、世間の女の例によって、変則な独身でお立ちになろうとあそばさないで、御結婚をあそばすほうが御安心のおできになることと存じます。特別な御後見をなさいます方のないのはお心細いことでないかと存じ上げます」
  Ohokata no mi-kokoro-okite ni sitagahi kikoye te, sakasiki simo-bito mo nabiki saburahu koso, tayori aru koto ni habera me. Toritate taru ohom-usiromi monosi tamaha zara m ha, naho kokoro-bosoki waza ni nam haberu beki."
2.2.6  と聞こゆ。
 と申し上げる。
 と、自身の意見も述べた。
  to kikoyu.
注釈85乳母、またことのついでに女三の宮の乳母、左中弁の言葉を朱雀院に奏上。場面変わるが、文章は一続き。2.2.1
注釈86しかしかなむなにがしの朝臣に以下「わざになむはべるべき」まで、乳母の詞。冒頭、間接話法が混じる。「しかしか」は、語り手が要約した表現。「なにがしの朝臣」は、実際は実名を言ったのを省略した表現。2.2.2
注釈87かの院にはかならず以下「伝へきこえむ」まで、弁の詞を引用。ただし、そっくり同じ表現は、乳母と弁との会話の中にはない。2.2.2
注釈88いかなるべきことにかははべらむ『集成』は「どんなものでございましょうか」。『完訳』は「どういたすのがよろしゅうございましょう」と訳す。2.2.2
注釈89ものしたまふなれど「なれ」伝聞推定の助動詞。2.2.3
注釈90皆ほがらかに、あるべかしくて、世の中を御心と過ぐしたまひつべきもおはしますべかめるを『集成』は「どなたもはっきり自分のお考えを持ち、立派にお振舞いになって、この世の中をご自分のお考え通りにお過しになれる方もおいでのようですが」。『完訳』は「みなわだかまりなくうまく立派に処置して、夫婦仲をご自分で分別してお過しになれる方もいらっしゃるようでございますが」と訳す。2.2.4
校訂28 うけひき うけひき--うけけ(け/$)ひき 2.2.2
校訂29 なびき なびき--な(な/+ひ)き 2.2.5
校訂30 はべらめ はべらめ--はへらす(す/$め) 2.2.5
2.3
第三段 朱雀院、内親王の結婚を苦慮


2-3  Suzaku is in anxiety about Sam-no-Miya's marriage

2.3.1  「 しか思ひたどるによりなむ皇女たちの世づきたるありさまは、うたてあはあはしきやうにもあり、また高き際といへども、女は男に見ゆるにつけてこそ、悔しげなることも、めざましき思ひも、おのづからうちまじるわざなめれと、かつは心苦しく思ひ乱るるを、また、 さるべき人に立ちおくれて、頼む蔭どもに別れぬる後、 心を立てて世の中に過ぐさむことも昔は、人の心たひらかにて世に許さるまじきほどのことをば思ひ及ばぬものとならひたりけむ、今の世には、好き好きしく乱りがはしきことも、類に触れて聞こゆめりかし。
 「そのように考えるからなのだ。皇女たちが結婚している様子は、見苦しく軽薄なようでもあり、また高貴な身分といっても、女は男との結婚によって、悔やまれることも、しゃくに障る思いも、自然と生じるもののようだと、一方では不憫に思い悩むが、また一方で、頼りとする人に先立たれて、頼る人々に別れた後、自分の意志通りに世の中を生きて行くことも、昔は、人の心も穏やかで、世間から許されない身分違いのことは、考えもしないことであったろうが、今の世では、好色で淫らなことも、縁者を頼って聞こえてくるようだ。
 「私も宮のことをいろいろと考えて、内親王は神聖なものとしておきたくも思うし、また高い身分の者も結婚したがために、内輪のことも世評に上るようになるし、しないでよいはずの煩悶はんもんで自身を苦しめることにもなるのだからと否定に傾きもするのだが、また親兄弟にも別れたあとで、女が独身でいては、昔の時代の人は神聖なものは神聖なものとしておいたが、近代の男はそれを無視して強要的な結婚を行なうのに躊躇ちゅうちょしない悪徳を平気でするようになったために、いろんなうわさの種もまくのだがね。
  "Sika omohi tadoru ni yori nam. Miko-tati no yoduki taru arisama ha, utate aha-ahasiki yau mo ari, mata takaki kiha to ihe domo, womna ha wotoko ni miyuru ni tuke te koso, kuyasige naru koto mo, mezamasiki omohi mo, onodukara uti-maziru waza na' mere to, katu ha kokoro-gurusiku omohi midaruru wo, mata, saru-beki hito ni tati-okure te, tanomu kage-domo ni wakare nuru noti, kokoro wo tate te yononaka ni sugusa m koto mo, mukasi ha, hito no kokoro tahiraka ni te, yo ni yurusa ru maziki hodo no koto wo ba, omohi oyoba nu mono to narahi tari kem, ima no yo ni ha, suki-zukisiku midari-gahasiki koto mo, rui ni hure te kikoyu meri kasi.
2.3.2   昨日まで高き親の家にあがめられかしづかれし人の女の、今日は直々しく下れる際の好き者どもに名を立ち欺かれて、亡き親の面を伏せ、影を恥づかしむるたぐひ多く聞こゆる。言ひもてゆけば皆 同じことなり。
 昨日まで高貴な親の家で大切にされて育てられていた姫が、今日は平凡な身分の低い好色者たちに浮名を立てられだまされて、亡き親の面目をつぶし、死後の名を辱めるような例が多く聞こえる。詮じつめれば、どちらも同じ事である。
 昨日きのうまでは尊貴な親の娘として尊敬されていた人が、つまらぬ男にだまされて浮き名を立て、ある者は死んだ親の名誉をそこなうというたぐいの話は幾つもあるから、姫宮であっても女であれば同じことで、
  Kinohu made takaki oya no ihe ni agame rare kasiduka re si hito no musume no, kehu ha naho-nahosiku kudare ru kiha no suki-mono-domo ni na wo tati-azamuka re te, naki oya no omote wo huse, kage wo hadukasimuru taguhi ohoku kikoyuru. Ihi mote yuke ba mina onazi koto nari.
2.3.3  ほどほどにつけて、 宿世などいふなることは、知りがたきわざなれば、よろづにうしろめたくなむ。すべて、悪しくも善くも、さるべき人の心に許しおきたるままにて世の中を過ぐすは、宿世宿世にて、後の世に衰へある時も、みづからの過ちにはならず。
 身分身分に応じて、宿世などということは、知りがたいことなので、万事が不安である。総じて、良くも悪くも、しかるべき人が指図しておいたようにして世の中を過ごして行くのは、それぞれの宿世であって、晩年に衰えることがあっても、自分自身の間違いにはならない。
 宿命などということはことにわからぬものだから、私が配偶者を選ばずに捨てておくことは不安だとも一方では考えられる。良くなっても悪くなっても、それは自発的に決めたことでなくて親や兄が選んだ結婚をしておれば、悪いことがあとにあってもその人の責任にはならないで済むし、
  Hodo-hodo ni tuke te, sukuse nado ihu naru koto ha, siri gataki waza nare ba, yorodu ni usirometaku nam. Subete, asiku mo yoku mo, saru-beki hito no kokoro ni yurusi oki taru mama ni te yononaka wo sugusu ha, sukuse sukuse ni te, noti no yo ni otorohe aru toki mo, midukara no ayamati ni ha nara zu.
2.3.4  あり経て、こよなき幸ひあり、めやすきことになる折は、 かくても悪しからざりけりと見ゆれど、なほ、たちまちふとうち聞きつけたるほどは、親に知られず、さるべき人も許さぬに、心づからの忍びわざし出でたるなむ、女の身にはますことなき疵とおぼゆるわざなる。
 後になって、この上ない幸福がきて、見苦しからぬことになった時には、それでもかまわなかったと見えるが、やはり、その当座いきなり耳にした時には、親にも内緒だし、しかるべき保護者も許さないのに、自分勝手の秘事をしでかしたのは、女の身の上にはこれ以上ない欠点だと思われることだ。
 恋愛結婚のあとが良くなれば、ああしたことの結果も良くなるものであるとは見えても、その初めに噂の広まったころには、親の同意も得ず、家族も許さないのに恋愛をして良人おっとを持ったということは女の第一の恥と聞こえるからね。
  Ari he te, koyonaki saihahi ari, meyasuki koto ni naru wori ha, kakute mo asikara zari keri to miyure do, naho, tatimati huto uti-kiki-tuke taru hodo ha, oya ni sira re zu, saru beki hito mo yurusa nu ni, kokorodukara no sinobi-waza si-ide taru nam, womna no mi ni ha masu koto naki kizu to oboyuru waza naru.
2.3.5   直々しきただ人の仲らひにてだに、あはつけく心づきなきことなり。みづからの心より離れてあるべきにもあらぬを、思ふ心よりほかに人にも見えず、 宿世のほど定められむなむ、いと軽々しく、身のもてなし、 ありさま推し量らるることなるを。
 平凡な臣下の者同士でさえ、軽薄で良くないことである。本人の意志と無関係に事が運ばれて良いはずのものでもないが、自分の意に反しては結婚せず、運命の程が決めらるのは、たいそう軽率で、日常の態度、様子が想像されることよ。
 それは普通の家の娘の場合でも軽佻けいちょうに思われることに違いない。また自分は自分の身体からだの持ち主であるのに、それを暴力で蹂躪じゅうりんされた結果、意外な男の妻になるようなことも軽率で、その女を侮蔑ぶべつしたくなるが、
  Naho-nahosiki tadaudo no nakarahi ni te dani, ahatukeku kokorodukinaki koto nari. Midukara no kokoro yori hanare te aru beki ni mo ara nu wo, omohu kokoro yori hoka ni hito ni mo miye zu, sukuse no hodo sadame rare m nam, ito karo-garosiku, mi no motenasi, arisama osihakara ruru koto naru wo.
2.3.6   あやしくものはかなき心ざまにやと 見ゆめる御さまなるを、これかれの心にまかせ、もてなし きこゆなる、さやうなることの世に漏り出でむこと、いと憂きことなり」
 妙に頼りない性質ではないかと見えるようなご様子だから、お前たちの考えのままに、お取り計らい申し上げるというのは、そのようなことが世間に漏れ出るようなことは、まことに情けないことだ」
姫宮も元来弱い、すきの見える性質ではないかと私は心配しているのだから、侍女どもが勝手なことを宮に押しつけるようなことをさせてはならないよ。そんな噂が世間へ聞こえては恥ずかしいからね」
  Ayasiku mono hakanaki kokorozama ni ya to miyu meru ohom-sama naru wo, kore kare no kokoro ni makase, motenasi kikoyu naru, sayau naru koto no yo ni mori-ide m koto, ito uki koto nari."
2.3.7  など、見捨てたてまつりたまはむ後の世を、うしろめたげに思ひきこえさせたまへれば、いよいよわづらはしく思ひあへり。
 などと、お残し申されて御出家あそばされる後のことを、不安にお思い申し上げていらっしゃるので、ますます厄介なことと思い合っていた。
 などとお別れになったあとのことまでもお案じになって仰せられることで、乳母たち、女房たちは責任の重さを苦労に思った。
  nado, mi-sute tatematuri tamaha m noti no yo wo, usirometage ni omohi kikoye sase tamahe re ba, iyo-iyo wadurahasiku omohi-ahe ri.
注釈91しか思ひたどるによりなむ以下「いとうきことなり」まで、朱雀院の詞。『集成』は、読点で下文に続ける。『完訳』は、句点で文を切り「決断しがたい、を補い読む」。2.3.1
注釈92皇女たちの世づきたるありさまはうたてあはあはしきやうにもあり皇族の立場からみると、皇女が世俗の結婚するというのは、軽薄で見苦しく見える、という。皇女を神聖な巫女とみる信仰が底流にあるものであろう。2.3.1
注釈93さるべき人に立ちおくれて親などに先立たれることをさす。2.3.1
注釈94心を立てて世の中に過ぐさむことも『集成』は「自分の意志通り、世の中を生きてゆくといったことも。内親王が独身を通すこという」。『完訳』「自分の意志どおりに。独身を押し通すことを暗にいう」と注す。2.3.1
注釈95昔は人の心たひらかにて以下の「今の世には好き好きしく乱りがはしきことも」との対句構文。2.3.1
注釈96世に許さるまじきほどのことをば世間に認められないような身分違いの結婚などは。2.3.1
注釈97思ひ及ばぬものとならひたりけむ『集成』は「考えてもいけないことと思いこんでいたようだが」。『完訳』は「そんな気を起こさぬ習わしだったろうが」と訳す。2.3.1
注釈98昨日まで高き親の家にあがめられかしづかれし人の女の今日は直々しく下れる際の好き者どもに名を立ち欺かれて亡き親の面を伏せ影を恥づかしむるたぐひ多く聞こゆる無常迅速の世のさまをいう。対句じたての名文は『方丈記』の冒頭を思わせる。2.3.2
注釈99かくても悪しからざりけり『集成』は「「かく」は「心づからの忍びわざし出たる」ことをさす」。『完訳』は「自分勝手な結婚をしても」と注す。2.3.4
注釈100直々しきただ人の仲らひにてだにあはつけく「だに」副助詞。平凡な臣下の者でさえ、まして皇族の内親王は、というニュアンスの文脈。2.3.5
注釈101宿世のほど定められむなむ「られ」受身の助動詞。『集成』は「低い身分に定まってしまうのは」と訳す。2.3.5
注釈102あやしくものはかなき心ざまにやと主語は、女三の宮。一般論から話題転じて、女三の宮についていう。2.3.6
校訂31 同じ 同じ--おなな(な/$) 2.3.2
校訂32 宿世 宿世--すき(き/$く)せ 2.3.3
校訂33 ありさま ありさま--ありさま/\(/\/$) 2.3.5
校訂34 見ゆめる 見ゆめる--みゆめるを(を/$) 2.3.6
校訂35 きこゆなる きこゆなる--きこゆな(な/$なる) 2.3.6
2.4
第四段 朱雀院、婿候補者を批評


2-4  Suzaku criticizes on candidates for his daughter's bridegroom

2.4.1  「 今すこしものをも思ひ知りたまふほどまで見過ぐさむとこそは、年ごろ念じつるを、深き本意も遂げずなりぬべき心地のするに思ひもよほされてなむ。
 「もう少し分別がおできになるまで世話してあげようとは、長年辛抱してきたが、深い出家の本懐も遂げずになってしまいそうな気がするので、つい気が急かされるものだ。
 「もう少し大人になられるまで私がついていたいと、今まで念じ続けてきたものだが、このごろの健康状態でそうしていては、信仰生活にはいることもできずに死んでしまうのではないかという気がされるので、やむをえず出家を断行することにした。
  "Ima sukosi mono wo omohi-siri tamahu hodo made mi-sugusa m to koso ha, tosi-goro nen-zi turu wo, hukaki ho'i mo toge zu nari nu beki kokoti no suru ni omohi moyohosa re te nam.
2.4.2  かの 六条の大殿は、げに、さりともものの心得て、うしろやすき方はこよなかりなむを、 方々にあまたものせらるべき人びとを知るべきにもあらずかしとてもかくても、人の心からなり。のどかにおちゐて、おほかたの世のためしとも、うしろやすき方は並びなくものせらるる人なり。さらで良ろしかるべき人、 誰ればかりかはあらむ
 あの六条の大殿は、なるほど、そうはいっても万事心得ていて、安心な点ではこの上ないが、あちこちに大勢いらっしゃるご夫人たちを考慮する必要もあるまい。何といっても、当人の心次第である。ゆったりと落ち着いていて、広く世の模範であり、信頼できる点では並ぶ者がなくおいでになる方である。この人以外で適当な人は誰がいようか。
 六条院に託しておくのが、なんといってもいちばん安心のできることだと思う。幾人いくたりも侍している夫人はあってもそれをいちいち念頭に置いてゆかねばならぬことでもなし、ただ主観的にこちらさえ寛大な心を持って臨めばよいことなのだ。はなやかな時代も過ぎて平淡な心境におられるあの院に三の宮の良人おっととなっていただくことは最も安心なことだと私は認めている。そのほかに適当な候補者はないよ。
  Kano Rokudeu-no-Otodo ha, geni, saritomo mono no kokoro-e te, usiroyasuki kata ha koyonakari na m wo, kata-gata ni amata monose raru beki hito-bito wo siru beki ni mo ara zu kasi. Totemo-kakutemo, hito no kokoro kara nari. Nodoka ni oti-wi te, ohokata no yo no tamesi to mo, usiroyasuki kata ha narabinaku monose raruru hito nari. Sarade yorosikaru beki hito, tare bakari ka ha ara m?
2.4.3  兵部卿宮、人柄はめやすしかし。同じき筋にて、異人とわきまへおとしむべきにはあらねど、あまりいたくなよびよしめくほどに、重き方おくれて、すこし軽びたるおぼえや進みにたらむ。なほ、さる人はいと頼もしげなくなむある。
 兵部卿宮、性質は好ましい。同じ皇族で、他人扱いして軽んじるべきではないが、あまりにひどく弱々しく風流めいていて、重々しいところが足りなくて、少し軽薄な感じが過ぎていよう。やはり、そのような人はたいそう頼りなさそうな気がする。
 兵部卿ひょうぶきょうの宮は風采ふうさいも人物もひととおりはりっぱな人だがね、それに私としては兄弟のことだから他人のようにひどい批評はできないものの、とにかくあの人はあまりに柔弱で、芸術家に傾き過ぎて、世間の信望が少し薄いようだ。そんなふうな人は良人として頼もしくは思われない。
  Hyaubukyau-no-Miya, hitogara ha meyasusi kasi. Onaziki sudi ni te, koto-bito to wakimahe otosimu beki ni ha ara ne do, amari itaku nayobi yosimeku hodo ni, omoki kata okure te, sukosi karobi taru oboye ya susumi ni tara m. Naho, saru hito ha ito tanomosige naku nam aru.
2.4.4  また、 大納言の朝臣の家司望むなる、さる方に、ものまめやかなるべきことにはあなれど、 さすがにいかにぞや。さやうにおしなべたる際は、なほめざましくなむあるべき。
 また、大納言の朝臣が家司を望んでいるというのは、そうした点では、忠実に勤めるにちがいないだろうが、それでもどんなものか。その程度の世間一般の身分の者では、やはりとんでもない不釣合であろう。
 また大納言が臣礼をもって奉仕しようというのは親切な男というべきだが、さてそれに許してやる気にはちょっとなれない。やはり普通の男の妻には与えにくい気がする。
  Mata, Dainagon-no-Asom no ihedukasa nozomu naru, saru kata ni, mono mameyaka naru beki koto ni ha a' nare do, sasuga ni ikani zo ya? Sayau ni osinabe taru kiha ha, naho mezamasiku nam aru beki.
2.4.5   昔も、かうやうなる選びには、何事も人に異なるおぼえあるに、ことよりてこそありけれ。 ただひとへに、またなく待ちゐむ方ばかりを、かしこきことに思ひ定めむは、いと飽かず口惜しかるべきわざになむ。
 昔も、このような婿選びでは、万事につけ人より格別優れた評判のある者に、落ち着いたものだ。ただ一途に、他の女には目もくれず大事にしてくれる点だけを、立派なことだと考えるのは、実に物足りなく残念なことだ。
 昔の時代にも帝王の婿にはある一事の傑出した人物が選ばれたようだ。ただ都合のよいというようなことで人選をするのは恥ずかしいことだ。
  Mukasi mo, kau yau naru erabi ni ha, nani-goto mo hito ni koto naru oboye aru ni, koto yori te koso ari kere. Tada hitoheni, matanaku moti-wi m kata bakari wo, kasikoki koto ni omohi sadame m ha, ito akazu kutiwosikaru beki waza ni nam.
2.4.6   右衛門督の下にわぶなるよし尚侍のものせられし、その人ばかりなむ、 位など今すこしものめかしきほどになりなば、などかは、とも思ひ寄りぬべきを、 まだ年いと若くて、むげに軽びたるほどなり。
 右衛門督が内々希望していると、尚侍が話していたが、その人だけは、位などがもう少し一人前になったら、何の不釣合なことがあろう、と思いつくところだが、まだ年齢が若くて、あまりに軽い地位である。
 右衛門督うえもんのかみがやはりその希望を持っているということを尚侍ないしのかみが言っていたが、あれだけはすぐれた人物だから、官位がもう少し進んでいたら私も大いに考慮するが、まだ今のところでは地位が不十分だ。
  Wemon-no-Kami no sita ni wabu naru yosi, Naisi-no-Kami no monose rare si, sono hito bakari nam, kurawi nado ima sukosi mono-mekasiki hodo ni nari na ba, nadoka ha, to mo omohi-yori nu beki wo, mada tosi ito wakaku te, muge ni karobi taru hodo nari.
2.4.7  高き心ざし深くて、やもめにて過ぐしつつ、いたくしづまり思ひ上がれるけしき、人には抜けて、 才などもこともなく、つひには世のかためとなるべき人なれば、行く末も頼もしけれど、なほまたこのためにと思ひ果てむには、 限りぞあるや
 高貴な女性をという願いが強くて、独身で過ごしながら、たいそう沈着に理想を高く持している態度が、誰よりも抜群で、漢学なども難なく備わり、最後は世の重鎮となるはずの人なので、将来を期待できるが、やはり婿にと決めてしまうには、不十分ではないか」
 理想が高くてだれとも結婚をせずにまだ独身でいて思い上がった精神が実によい。学問も相当なものだし、廟堂びょうどうに立って仕事のできる点で将来も有望だが、私には愛女の婿はそれでもないという心がある。相当に濃厚にある」
  Takaki kokorozasi hukaku te, yamome ni te sugusi tutu, itaku sidumari omohi agare ru kesiki, hito ni ha nuke te, zae nado mo koto mo naku, tuhini ha yo no katame to naru beki hito nare ba, yukusuwe mo tanomosikere do, naho mata kono tame ni to omohi-hate m ni ha, kagiri zo aru ya!"
2.4.8  と、よろづに思しわづらひたり。
 と、いろいろとお考え悩んでいらっしゃった。
 こんなふうに仰せられて院はお心を悩ませておいでになった。
  to, yorodu ni obosi wadurahi tari.
2.4.9  かうやうにも思し寄らぬ姉宮たちをば、かけても聞こえ悩ましたまふ人もなし。あやしく、うちうちに のたまはする御ささめき 言どもの、おのづからひろごりて、心を尽くす人びと多かりけり。
 これほどにはお考えでない姉宮たちには、一向にお心をお悩ませ申し上げる人もいない。不思議と、内々に仰せになる内証事が、自然と広がって、気を揉む人々が多いのであった。
 多い候補者の中の婿選びを困難に思召おぼしめ女三にょさんみや以外の姉宮がたに求婚をする人はさてないのである。院がどんなにその一方ひとかたをお愛しになって、よい配偶をお決めになることに専心しておいでになるかということが、院内から自然に外へ聞こえ、自身を候補に擬しているものが多いのである。
  Kayau ni mo obosi-yora nu Ane-Miya-tati wo ba, kakete mo kikoye nayamasi tamahu hito mo nasi. Ayasiku, uti-uti ni notamaha suru ohom-sasameki-goto-domo no, onodukara hirogori te, kokoro wo tukusu hito-bito ohokari keri.
注釈103今すこしものをも思ひ知りたまふほどまで以下「限りぞあるや」まで、朱雀院の詞。2.4.1
注釈104六条の大殿はげにさりともものの心得てうしろやすき方は源氏を「ものの心得て」と期待する。2.4.2
注釈105方々にあまたものせらるべき人びとを知るべきにもあらずかし六条院のご夫人方を考慮に入れる必要はあるまい、と考える。内親王としての身分血筋の高さからである。2.4.2
注釈106とてもかくても人の心からなり『完訳』は「院は宮にその能力のないことを知りながら、その難点を無視する」と注す。2.4.2
注釈107誰ればかりかはあらむ「かは」係助詞、反語。「む」連体形。誰がいようか、誰もいない。2.4.2
注釈108大納言の朝臣の家司望むなる系図不詳の人。『完訳』は「親王・摂関以下三位以上の家務を執る者。女三の宮との結婚への願望を婉曲に言った表現」と注す。「なる」伝聞推定の助動詞。2.4.4
注釈109さすがにいかにぞや『完訳』は「身分不相応と躊躇される気持」と注す。2.4.4
注釈110昔も、かうやうなる選びには『河海抄』は、嵯峨天皇の潔姫の太政大臣良房へ、醍醐天皇の康子内親王の右大臣師輔への降嫁を指摘。2.4.5
注釈111ただひとへに、またなく待ちゐむ方ばかりを『集成』は「言外に、多くの妻妾を持とうとも、源氏がいいという気持がある」と注す。2.4.5
注釈112右衛門督の下にわぶなるよし「なる」伝聞推定の助動詞。柏木、右衛門督として登場。2.4.6
注釈113尚侍のものせられし「ものす」は言うの意。朧月夜尚侍、柏木の母方の叔母。右大臣家四の君の妹六の君。2.4.6
注釈114位など今すこしものめかしきほどに柏木、現在、参議兼右衛門督、正四位下相当官。上達部(三位)以上が一人前だという。2.4.6
注釈115まだ年いと若くて現在、柏木二十三、四歳。2.4.6
注釈116才などもこともなく漢学の才能などが申し分なく備わっている。2.4.7
注釈117限りぞあるや『完訳』は「その線以下というものだ」「当座の身分の低さをいう」と注す。2.4.7
校訂36 のたまはする のたまはする--の給はすゑの(ゑの/$る) 2.4.9
校訂37 言どもの 言どもの--*こともの 2.4.9
2.5
第五段 婿候補者たちの動静


2-5  Candidates for Naishinno's bridegroom are anxious to get married to her

2.5.1   太政大臣も
 太政大臣も、
 太政大臣も
  Ohoki-Otodo mo,
2.5.2  「 この衛門督の、今までひとりのみありて、皇女たちならずは得じと思へるを、かかる御定めども出で来たなる折に、さやうにもおもむけたてまつりて、 召し寄せられたらむ時、いかばかりわがためにも面目ありてうれしからむ」
 「この右衛門督が、今まで独身でいて、内親王でなければ妻としないと思っているのを、このような御詮議が問題になっているという機会に、そのようにお願い申し上げて、召し寄せられたならば、どんなにか自分にとっても名誉なことで、嬉しいだろう」
 長男の右衛門督がまだ独身でいて、妻は内親王でなければ結婚はせぬと思うふうであるから、御降嫁が決定してだれもがお許しを願って出た時に、院の御婿に長男が選ばれたなら、どんなに自身のためにも光栄であるかしれない
  "Kono Wemon-no-Kami no, ima made hitori nomi ari te, Miko-tati nara zu ha e zi to omohe ru wo, kakaru ohom-sadame-domo ide-ki ta' naru wori ni, sayau ni mo omomuke tatematuri te, mesi-yose rare tara m toki, ikabakari waga tame ni mo menboku ari te uresikara m."
2.5.3  と、思しのたまひて、尚侍の君には、かの姉北の方して、伝へ申したまふなりけり。よろづ限りなき言の葉を尽くして奏せさせ、御けしき賜はらせたまふ。
 と、お思いになりおっしゃりもなさって、尚侍の君には、その姉の北の方を通じて、お伝え申し上げるのであった。あらん限りの言葉を尽くして奏上させて、御内意をお伺いになる。
 と考え、院の御寵姫ちょうきの尚侍の所へは、その人の姉である夫人から言わせて運動もし、一方では直接お話も申し上げて懇請もしていた。
  to, obosi notamahi te, Naisi no Kam-no-Kimi ni ha, ka no ane Kitanokata si te, tutahe mausi tamahu nari keri. Yorodu kagiri naki kotonoha wo tukusi te sou-se sase, mi-kesiki tamahara se tamahu.
2.5.4  兵部卿宮は、 左大将の北の方を聞こえ外したまひて、聞きたまふらむところもあり、かたほならむことはと、選り過ぐしたまふに、 いかがは御心の動かざらむ 限りなく思し焦られたり。
 兵部卿宮は、左大将の北の方を貰い受け損ねなさって、お聞きになっているだろうところもあって、欠点があってはと、選り好みしていらっしゃったが、どうしてお心が動かないことがあろうか。この上なくやきもきしていらっしゃった。
 兵部卿の宮は左大将の夫人に失恋をあそばされたのであるから、その夫婦に対してもりっぱでない結婚はできないようにお思いになって、夫人を選んでおいでになる場合であったから、お心の動かないわけはない。非常に熱心な求婚者で宮はおありになった。
  Hyaubukyau-no-Miya ha, Sa-Daisyau no Kitanokata wo kikoye hadusi tamahi te, kiki tamahu ram tokoro mo ari, kataho nara m koto ha to, eri sugusi tamahu ni, ikaga ha mi-kokoro no ugoka zara m. Kagirinaku obosi-ira re tari.
2.5.5   藤大納言は、年ごろ院の別当にて、 親しく仕うまつりてさぶらひ馴れにたるを、御山籠もりしたまひなむ後、寄り所なく心細かるべきに、この宮の御後見にことよせて、 顧みさせたまふべく、御けしき切に 賜はりたまふなるべし
 藤大納言は、長年院の別当として、親しくお仕え続けてきたが、御入山あそばして後、頼る所もなくきっと心細いだろうから、この宮の御後見を口実にして、お心にかけていただくよう、御内意を熱心に伺っていらっしゃるのであろう。
 とう大納言は長い間院の別当をしていて、親しく奉仕して来た人であったから、院が御寺みてらへおはいりになれば有力な保護者を失いたてまつることになるのを、内親王と結婚をして今後も地位の保証を得たいという功利的な考えからしきりにお許しをうているのであった。
  Tou-Dainagon ha,tosi-goro Win no Bettau ni te, sitasiku tukau-maturi te saburahi nare ni taru wo, mi-yama-gomori si tamahi nam noti, yori-dokoro naku kokoro-bosokaru beki ni, kono Miya no ohom-usiromi ni kotoyose te, kaherimi sase tamahu beku, mi-kesiki seti ni tamahari tamahu naru besi.
注釈118太政大臣も太政大臣、柏木の父。2.5.1
注釈119この衛門督の以下「うれしからむ」まで、太政大臣の詞。2.5.2
注釈120召し寄せられたらむ時『集成』は「〔婿として〕親しくお召し頂けたら」。『完訳』は「もしお近づきを許されることになったら」と訳す。2.5.2
注釈121左大将の北の方を聞こえ外したまひて鬚黒大将の北の方、すなわち玉鬘。2.5.4
注釈122いかがは御心の動かざらむ語り手の推測、挿入句。2.5.4
注釈123藤大納言は前に「大納言の朝臣の家司望むなる」とあった人。朱雀院の院庁の長官。2.5.5
注釈124顧みさせたまふべく「させ」尊敬の助動詞。「たまふ」尊敬の補助動詞。主語は朱雀院。最高敬語。2.5.5
注釈125賜はりたまふなるべし主語は藤大納言。「なる」断定の助動詞「べし」推量の助動詞、語り手の断定と推量。2.5.5
校訂38 動かざらむ 動かざらむ--たゝ(たゝ/$うこか)さらむ 2.5.4
校訂39 限りなく 限りなく--かきりなき(き/$く) 2.5.4
校訂40 親しく 親しく--したしき(き/$く) 2.5.5
2.6
第六段 夕霧の心中


2-6  Yugiri hesitates over which to be candedate or not to be one

2.6.1   権中納言も、かかることどもを聞きたまふに、
 権中納言も、このような事柄をお聞きになって、
 げん中納言も院の御婿の候補者が続出するのを見ては、
  Gon-no-Tyuunagon mo, kakaru koto-domo wo kiki tamahu ni,
2.6.2  「 人伝てにもあらず、さばかり おもむけさせたまへりし御けしきを見たてまつりてしかば、おのづから便りにつけて、 漏らし、聞こし召さることもあらば、よももて離れてはあらじかし」
 「人伝でもなく直接に、あれほど意中をお漏らしあそばした御様子を拝見したのだから、自然と何かの機会を待って、自分の意向をほのめかし、お耳にあそばすことがあったら、けっして外れることはあるまい」
 この人には間接でなく、あれほどにも明瞭めいりょうに御意のあるところをお見せになったのであるから、中間によい人を得て姫宮をお望み申し上げた場合には冷淡な態度を院はおとりになるまい
  "Hitodute ni mo ara zu, sabakari omomuke sase tamahe ri si mi-kesiki wo mi tatematuri te sika ba, onodukara tayori ni tuke te, morasi, kikosimesa ru koto mo ara ba, yo mo mote hanare te ha arazi kasi."
2.6.3  と、心ときめきもしつべけれど、
 と、心をときめかしたにちがいなかろうが、
 という自信もあって、心がときめきもするのであるが、
  to, kokoro tokimeki mo si tu bekere do,
2.6.4  「 女君の今はとうちとけて頼みたまへるを、 年ごろ、つらきにもことつけつべかりしほどだに、他ざまの心もなくて過ぐしてしを、あやにくに、今さらに立ち返り、 にはかに物をや思はせきこえむなのめならずやむごとなき方にかかづらひなば、何ごとも思ふままならで、 左右に安からずは、わが身も苦しくこそはあらめ」
 「女君が、今はもう大丈夫と心から頼りにしていらっしゃるのを、長年、辛い仕打ちを口実に浮気しようと思えば出来た時でさえ、他の女への心変わりもなく過ごしてきたのに、無分別にも、今になって昔に戻って、急に心配をおかけできようか。並々ならぬ高貴なお方に関係したならば、どのようなことも思うようにならず、左右に気を使っては、自分も苦しいことだろう」
 自身を信頼している妻を見ては、過ぎ去ったあの苦しい境地に置かれて、もう絶縁をしてもよかった時代にさえなお自分はこの人以外の女を対象として考えようともせず通して来て、二度目の結婚を今さらすればにわかに妻は物思いをすることになろうし、一方が尊貴な人であれば自分の行動は束縛されて、思っていてもこちらを同じに扱うことができずに、左にも右にも不平があれば自分は苦しいことであろう
  "Womna-Gimi no ima ha to utitoke te tanomi tamahe ru wo, tosi-goro, turaki ni mo kototuke tu bekari si hodo dani, hoka-zama no kokoro mo naku te sugusi te si wo, ayaniku ni, imasara ni tati-kaheri, nihaka ni mono wo ya omoha se kikoye m? Nanome nara zu yamgotonaki kata ni kakadurahi na ba, nani-goto mo omohu mam nara de, hidari migi ni yasukara zu ha, waga mi mo kurusiku koso ha ara me."
2.6.5  など、もとより好き好きしからぬ心なれば、思ひしづめつつうち出でねど、さすがに他ざまに定まり果てたまはむも、いかにぞやおぼえて、耳はとまりけり。
 などと、本来好色でない性格なので、心を抑えながら外には出さないが、やはり他人に決定してしまうのも、どんなことかと思わずにはいられず、聞き耳を立てるのであった。
 という気になって、元来が多情な人ではないのであるから、動く心をしいておさえて何とも表面へは出さないのであるが、さすがに姫宮の婚約が他人と成り立つことは願われないで、この人のためには一つの心を離れぬ問題にはなった。
  nado, motoyori suki-zukisikara nu kokoro nare ba, omohi sidume tutu uti-ide ne do, sasuga ni hoka-zama ni sadamari hate tamaha m mo, ikani zo ya oboye te, mimi ha tomari keri.
注釈126権中納言も夕霧。2.6.1
注釈127人伝てにもあらず以下の文章は、地の文と夕霧の心中とが渾然一体化した表現。2.6.2
注釈128おもむけさせたまへりし「させ」尊敬の助動詞、「たまへ」尊敬の補助動詞、「り」完了の助動詞、「し」過去の助動詞。主語は朱雀院、最高敬語。『集成』は「意中をお漏らしになった」。『完訳』は「こちらの気持をそそるようにして仰せられた」と訳す。2.6.2
注釈129漏らし、聞こし召さることもあらば『完訳』は「自分の意中をほのめかしておいて、それが院の耳に入ったら」と訳す。「漏らし」の主体は夕霧、「聞こしめす」の主体は朱雀院。2.6.2
注釈130女君の以下「苦しくこそはあらめ」まで、再び夕霧の心中。2.6.4
注釈131年ごろつらきにも『完訳』は「以下、夕霧の心中」と注す。2.6.4
注釈132にはかに物をや思はせきこえむ『異本紫明抄』は「かねてよりつらさを我にならはさでにはかに物を思はするかな」(出典未詳)を引歌として指摘。「や」係助詞「む」推量の助動詞、連体形。反語表現。2.6.4
注釈133なのめならずやむごとなき方女三の宮をさす。2.6.4
注釈134左右に女三の宮と雲居雁をさす。2.6.4
2.7
第七段 朱雀院、使者を源氏のもとに遣わす


2-7  Suzaku sends a messenger to Genji

2.7.1   春宮にも、かかることども 聞こし召して、
 東宮におかれても、このような事をお耳にあそばして、
 東宮もこの婿選びのことをお聞きになって、
  Touguu ni mo, kakaru koto-domo kikosimesi te,
2.7.2  「 さし当たりたるただ今のことよりも、後の世の例ともなるべき ことなるを、よく思し召しめぐらすべきことなり人柄よろしとても、ただ人は限りあるを、なほ、しか思し立つことならば、かの六条院にこそ、親ざまに譲りきこえさせたまはめ」
 「差し当たっての現在のことよりも、後の世の例となるべきのことですから、よくよくお考えあそばさなければならないことです。人柄がまあまあ良いといっても、臣下では限界があるので、やはり、そのようにお考えになられるならば、あの六条院にこそ、親代わりとしてお譲り申し上げあそばしませ」
 「目前のことよりも、そうしたことは後世への手本にもなることですから、よくお考えになった上で人を選定あそばされるがよろしく思われます。どんなにりっぱな人物でも普通人は普通人なのですから、結局は六条院へお託しになるのが最善のことと考えます」
  "Sasiatari taru tadaima no koto yori mo, noti-no-yo no tamesi to mo naru beski koto naru wo, yoku obosimesi megurasu beki koto nari. Hito-gara yorosi tote mo, tadaudo ha kagiri aru wo, naho, sika obosi-tatu koto nara ba, kano Rokudeu-no-Win ni koso, oya-zama ni yuduri kikoye sase tamaha me."
2.7.3  となむ、わざとの御消息とはあらねど、御けしきありけるを、待ち聞かせたまひても、
 と、特別のお手紙というのではないが、御内意があったのを、お待ち受けお聞きあそばしても、
 とこれは表だった使いで進言されたのではないが、ある人をもって申された。
  to nam, wazato no ohom-seusoko to ha ara ne do, mi-kesiki ari keru wo, mati kika se tamahi te mo,
2.7.4  「 げに、さることなり。いとよく思しのたまはせたり
 「なるほど、おっしゃる通りだ。たいそうよく考えておっしゃったことだ」
 「もっともな意見だ。非常によい忠告だ」
  "Geni, saru koto nari. Ito yoku obosi notamaha se tari."
2.7.5  と、いよいよ御心立たせまひて、まづ、かの弁してぞ、かつがつ案内伝へきこえさせたまひける。
 と、ますます御決心をお固めあそばして、まずは、あの弁を使者として、とりあえず事情をお伝え申し上げさせあそばすのであった。
 院はこうお言いになって、いよいよその心におなりになり、まず三の宮のお乳母めのとの兄である左中弁から六条院へあらましの話をおさせになった。
  to, iyo-iyo mi-kokoro tata se tamahi te, madu, kano Ben si te zo, katu-gatu a' nai tutahe kikoye sase tamahi keru.
注釈135春宮にもかかることども東宮、十三歳。2.7.1
注釈136さし当たりたるただ今のことよりも以下「親ざまに譲りきこえさせたまはめ」まで、東宮から朱雀院への消息文。2.7.2
注釈137ことなるをよく思し召しめぐらすべきことなり明融臨模本は片仮名で補入。大島本と御物本は「事なり」とある。一方で横山本、陽明文庫本、池田本、国冬本等他の青表紙本や河内本、別本の保坂本、阿里莫本にもこの句がある。2.7.2
注釈138人柄よろしとてもただ人は限りあるを皇族と臣下の区別は歴然。臣下では限界があるという。2.7.2
注釈139げにさることなりいとよく思しのたまはせたり朱雀院の心中。2.7.4
校訂41 ことども ことども--*ことも 2.7.1
校訂42 ことなるを、よく思し召しめぐらすべきことなり ことなるを、よく思し召しめぐらすべきことなり--ことな(な/+るをよくおほしめくらすへき事也)り 2.7.2
2.8
第八段 源氏、承諾の意向を示す


2-8  Genji shows an attiude to consent to get married with Sam-no-Miya

2.8.1  この宮の御こと、かく思しわづらふさまは、さきざきも皆聞きおきたまへれば、
 この姫宮の御事、このようにお悩みの様子は、以前からもみなお聞きになっていらっしゃったので、
 女三の宮の結婚問題で院が御心痛をしておいでになることは以前から聞いておいでになったから、
  Kono Miya no ohom-koto, kaku obosi-wadurahu sama ha, saki-zaki mo mina kiki-oki tamahe re ba,
2.8.2  「 心苦しきことにもあなるかな。さはありとも、院の御世残りすくなしとて、 ここにはまた、いくばく立ちおくれたてまつるべしとてか、その 御後見の事をば受けとりきこえむ。げに、次第を過たぬにて、今しばしのほども 残りとまる限りあらば、おほかたにつけては、いづれの皇女たちをも、 よそに聞き放ち たてまつるべきにも あらねど、またかく取り分きて 聞きおきたてまつりてむをば、ことにこそは後見きこえめと思ふを、それだにいと不定なる世の定めなさなりや」
 「お気の毒なことですね。そうはいっても、院の御寿命が短いといっても、わたしとてまた、どれほど生き残り申せると思ってか、姫の御後見のことをお引き受け申すことができようか。なるほど、年の順を間違わずに、もう暫くの間長生きできたら、大体の関係からいって、どの内親王たちをも、他人扱い申すはずもないが、またこのように特別に御心配の旨をお伺いしてしまったような方を、特別に御後見致そうと思うが、それさえも無常な世の中の定めなさということだ」
 「御同情する。お気の毒に存じ上げている。しかし院が御生命の不安をお感じになったとすれば、私だって同じことなのだからね。どれだけあとへお残りする自信をもって御後事がお引き受けできると思うかね。御兄が先で、弟があとというそれも決まっていもせぬことを仮にそうとして私が何年かでも生き残っている間は、どの宮だって血縁のある方なのだから私はできるだけの御保護はするつもりなのに、しかも特別お心がかりに思召おぼしめす方にはまた特別のお世話もするが、しかしそれだって無常の人生なのだから、自分の生命いのちが受け合われない」
  "Kokoro-gurusiki koto ni mo a' naru kana! Saha ari tomo, Win no mi-yo nokori sukunasi tote, koko ni ha mata, ikubaku tati-okure tatematuru besi tote ka, sono ohom-usiromi no koto wo ba uketori kikoye m. Geni, sidai wo ayamata nu ni te, ima sibasi no hodo mo nokori tomaru kagiri ara ba, ohokata ni tuke te ha, idure no Miko-tati wo mo, yoso ni kiki-hanati tatematuru beki ni mo ara ne do, mata kaku toriwaki te kiki-oki tatematuri te m wo ba, koto ni koso ha usiromi kikoye me to omohu wo, sore dani ito hudeu naru yo no sadame nasa nari ya!"
2.8.3   とのたまひて
 とおっしゃって
 とお言いになって、また、
  to notamahi te,
2.8.4  「 まして、ひとつに頼まれたてまつるべき筋に、むつび馴れきこえむことは、いとなかなかに、うち続き世を去らむきざみ心苦しく、みづからのためにも浅からぬほだしになむあるべき。
 「それにもまして、一途に頼みにして戴くような者として、お親しみ申すことは、とてもかえって、引き続いて世を去るような時がおいたわしくて、自分自身にとっても容易ならぬ障りとなるにちがいなかろう。
 「まして私の妻にしておくことはどんなによくないことかしれない。私が院に続いてくなる時に、どんなにまたそれが私の気がかりになることか。私だけのことを考えても執着の残ることで、なすべきことでないと思われる。
  "Masite, hitotu ni tanoma re tatematuru beki sudi ni, mutubi nare kikoye m koto ha, ito naka-naka ni, uti-tuduki yo wo sara m kizami kokoro-gurusiku, midukara no tame ni mo asakara nu hodasi ni nam aru beki.
2.8.5  中納言などは、年若く軽々しきやうなれど、行く先遠くて、人柄も、つひに朝廷の御後見ともなりぬべき生ひ先なめれば、さも思し寄らむに、などかこよなからむ。
 中納言などは、年も若く身分も軽々しいようだが、将来性があって、人柄も、最後は朝廷のご後見をするにちがいない見込みのようなので、そちらにお考えなさって、どうして申し分ないことがあろう。
 私の子の中納言などは年も若くて軽い身分であっても、将来のある人物だからね。国家の柱石となる可能性を持っているのだから、中納言などへ御降嫁になってもそれが調和のとれないこととは思われない。
  Tyuunagon nado ha, tosi wakaku karu-garusiki yau nare do, yukusaki tohoku te, hitogara mo, tuhini ohoyake no ohom-usiromi to mo nari nu beki ohisaki namere ba, samo obosi-yora m ni, nado ka koyonakara m?
2.8.6  されど、いといたくまめだちて、 思ふ人定まりにてあめれば、それに 憚らせたまふにやあらむ
 しかし、とてもたいそう生真面目で、思う人を妻にしたようなので、それに御遠慮あそばすのだろうか」
 しかしあまりにまじめ過ぎる男で、一人の妻と円満に家庭を持っているということで院は御遠慮になるだろうか」
  Saredo, ito itaku mamedati te, omohu hito sadamari te zo amere ba, sore ni habakara se tamahu ni ya ara m?"
2.8.7  などのたまひて、みづからは思し離れたるさまなるを、弁は、おぼろけの御定めにもあらぬを、 かくのたまへばいとほしく、口惜しくも思ひて、うちうちに思し立ちにたるさまなど、詳しく聞こゆれば、さすがに、うち笑みつつ、
 などとおっしゃって、ご自身は思ってもいないというふうなので、弁は、並々な御決定でないことを、このようにおっしゃるので、お気の毒にも、残念にも思って、内々に御決意になった様子など、詳しく申し上げると、断ったとはいえ、やはりにっこりなさりながら、
 こうもお言いになって、御自身の結婚問題としてお取り上げにならないのを弁は見て、朱雀すざく院のほうでは堅い御決意で申し入れをさせておいでになるのであるがと残念にも思い、朱雀院をお気の毒にも思って、あちらの院がこのことの成り立つのを熱望しておいでになる事情をくわしく申し上げると、さすがに院は微笑をされて、
  nado notamahi te, midukara ha obosi-hanare taru sama naru wo, Ben ha, oboroke no ohom-sadame ni mo ara nu wo, kaku notamahe ba, itohosiku, kutiwosiku mo omohi te, uti-uti ni obosi-tati ni taru sama nado, kuhasiku kikoyure ba, sasuga ni, uti-wemi tutu,
2.8.8  「 いとかなしくしたてまつりたまふ皇女なめればあながちにかく来し方行く先のたどりも深きなめりかしな。ただ、内裏にこそたてまつりたまはめ。やむごとなきまづの人びとおはすといふことは、よしなきことなり。それにさはるべきことにもあらず。かならずさりとて、末の人疎かなるやうもなし。
 「とても大切にかわいがっていらっしゃる内親王のようなので、ひとえに過去や将来のことを深く考えたのだろうな。ただ、帝に差し上げなさるがよいであろう。れっきとした前からの人々がいらっしゃるということは、理由のないことである。そのことに支障の生じることではない。必ず、後から入内するからといって、後の人が疎略にされるものでない。
 「非常な御愛子なのだろうから、いろいろと将来を御心配になってのお考えだろう。宮中へお上げになればいいではないか。りっぱな後宮のかたがたがすでにおられるからといって、望みのないもののように思われるのは誤りだよ。
  "Ito kanasiku si tatematuri tamahu Miko na' mere ba, anagati ni kaku kisikata-yukusaki no tadori mo hukaki na' meri kasi na! Tada, Uti ni koso tatematuri tamaha me. Yamgotonaki madu no hito-bito ohasu to ihu koto ha, yosi naki koto nari. Sore ni saharu beki koto ni mo ara zu. Kanarazu saritote, Suwe no hito oroka naru yau mo nasi.
2.8.9  故院の御時に、大后の、坊の初めの女御にて、いきまきたまひしかど、むげの末に参りたまへりし 入道宮に、しばしは圧されたまひにきかし。
 故院の御時に、弘徽殿大后が、東宮の最初の女御として、威勢をふるっていらっしゃったが、はるか後に入内なさった入道宮に、暫くの間は圧倒されなさったのだ。
 故院の時に皇太后が東宮時代からの最初の女御にょごで、たいした勢力を持っておいでになったが、それがずっとのちにお上がりになった入道の宮様にその当時はけおとされておしまいになった例もあるのだからね。
  Ko-Win no ohom-toki ni, Oho-Kisaki no, Bau no hazime no Nyougo ni te, ikimaki tamahi sika do, muge no suwe ni mawiri tamahe ri si Nihudau-no-Miya ni, sibasi ha osa re tamahi ni ki kasi.
2.8.10   この皇女の御母女御こそは、かの宮の御はらからにものしたまひけめ。容貌も、さしつぎには、いとよしと言はれたまひし人なりしかば、 いづ方につけても、この姫宮おしなべての際にはよもおはせじを」
 この内親王の御母女御は、あの宮の御姉妹でいらっしゃったはず。器量も、その次には、おきれいな方だと言われなさった方であったから、どちらから見ても、この姫宮は並大抵の方ではいらっしゃるまいが」
 その宮の母君の女御は入道の宮のお妹さんだった。御容貌なども入道の宮に続いてお美しいという評判のあった方だから、御両親のどちらに似てもこの宮は平凡な美人ではおありになるまい」
  Kono Miko no ohom-haha-Nyougo koso ha, kano Miya no ohom-harakara ni monosi tamahi keme. Katati mo, sasitugi ni ha, ito yosi to iha re tamahi si hito nari sika ba, idu-kata ni tuke te mo, kono Hime-Miya osinabete no kiha ni ha yomo ohase zi wo."
2.8.11  など、 いぶかしくは思ひきこえたまふべし
 などと、興味深くお思い申し上げていらっしゃるのであろう。
 などと言っておいでになった。好奇心は持っておいでになるらしいのである。
  nado, ibukasiku ha omohi kikoye tamahu besi.
注釈140心苦しきことにもあなるかな以下「世の定めなさなりや」まで、源氏の詞。2.8.2
注釈141ここにはまたいくばく立ちおくれたてまつるべし朱雀院、四十二歳。源氏、三十九歳。2.8.2
注釈142残りとまる限りあらば『集成』は「生き残る寿命があったならば」。『完訳』は「この世に残りとどまることに決っているのだったら」と訳す。2.8.2
注釈143とのたまひて源氏が弁に。会話文と会話文との途中にはさみ込む。2.8.3
注釈144ましてひとつに頼まれたてまつるべき筋に以下「憚らせたまふにやあらむ」まで、源氏の詞。「ひとつに頼まれ」云々は女三の宮の婿になることをさす。2.8.4
注釈145思ふ人定まりにて雲居雁をさす。2.8.6
注釈146憚らせたまふにやあらむ主語は朱雀院。「せ」「たまふ」最高敬語。2.8.6
注釈147かくのたまへば主語は源氏。2.8.7
注釈148いとほしく口惜しくも思ひて『集成』は「困ったことだ、残念だと思って」。『完訳』は「院に対してお気の毒にも、また残念にも思って」と訳す。2.8.7
注釈149いとかなしくしたてまつりたまふ皇女なめれば以下「よもおはせじを」まで、源氏の心中。2.8.8
注釈150あながちにかく来し方行く先のたどりも深きなめりかしな『集成』は「むやみに、そんなふうに先例を調べ、将来の例になる点も深くお考えになるのだな」。『完訳』は「たってこんなにも来し方行く末の例になるようなことまであれこれ深くお考えまわしになるのであろうな」と訳す。2.8.8
注釈151入道宮藤壷。2.8.9
注釈152この皇女の御母女御こそはかの宮の御はらからにものしたまひけめ女三の宮の母、朱雀院の藤壷の女御は先帝の四の宮藤壷入道の宮の異母妹。その母は更衣。『完訳』は「女三の宮は藤壷の姪だからというあたり、源氏の心は微妙に変化して、彼女への関心を強める」と注す。2.8.10
注釈153いづ方につけても『完訳』は「父院からも母女御からも」と注す。2.8.10
注釈154いぶかしくは思ひきこえたまふべし「べし」推量の助動詞、語り手の強い推量のニュアンス。2.8.11
校訂43 御後見 御後見--*御うしろ 2.8.2
校訂44 よそに よそに--よそき(き/$)に 2.8.2
校訂45 たてまつる たてまつる--(/+た)てまつる 2.8.2
校訂46 あらねど あらねど--あらぬ(ぬ/$ね)と 2.8.2
校訂47 聞きおきたてまつり 聞きおきたてまつり--きゝをきて(て/$)たてまつり 2.8.2
校訂48 あめれば あめれば--あめる(る/#れ)は 2.8.6
Last updated 11/15/2001
渋谷栄一校訂(C)(ver.1-2-2)
Last updated 3/10/2002
渋谷栄一注釈(ver.1-1-3)
Last updated 11/15/2001
渋谷栄一訳(C)(ver.1-2-2)
現代語訳
与謝野晶子
電子化
上田英代(古典総合研究所)
底本
角川文庫 全訳源氏物語
校正・
ルビ復活
門田裕志、小林繁雄(青空文庫)

2004年3月9日

渋谷栄一訳
との突合せ
若林貴幸、宮脇文経

2005年9月4日

Last updated 9/23/2002
Written in Japanese roman letters
by Eiichi Shibuya (C) (ver.1-3-2)
Picture "Eiri Genji Monogatari"(1650 1st edition)
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